機械設備を分解して移動すれば、コストは莫大だが…
Q巨大な機械が何台もある工場なのですが、本当に操業を続けられるのですか?
問題ありません。
機械と機械の間のスペースを上手に活用し、ウレタン樹脂の注入方法を工夫すればよいのです。もっとも、床が荷物ですっかり覆い隠されてしまっていては、樹脂を注入する孔自体が確保できなくなってしまいます。
九州の機械部品メーカーの工場における施工もこれに近いケースでした。沈下の起きている面積は1108平方メートル、沈下量は最大で130ミリ。問題は、工場内に設置されている工作機械が、幅3メートル弱、長さ10メートル強という巨大なもので、しかもそれが十数基もあったことです。これでは、通常の注入間隔を確保できません。後述しますが、床に孔を開けて樹脂を注入していく間隔は、一定以上になると床下のウレタンに隙間ができ、強度が著しく劣るのです。
しかも、この機械は重さが数十トンもあり、仮に分解して移動するとなると、その手間と時間、コストはバカになりません。それだけの大重量のモノをどかして施工した場合、床下の地盤への荷重の変化が大きく、せっかくの修正に影響が出てしまう可能性もあります。
それを考えれば、機械はそのままで床のレベル修正を行ったほうが望ましい。そこで、この工場に合わせた独自の作業方法が必要になりました。
工夫次第では施工中の操業も可能
機械の周囲からその内側下の地面に向けて斜めに孔を開け、そこに銅パイプを差し込んで、機械の下にも樹脂を注入するのです。銅パイプを使用したのは、それなりの長さを地面に差し込むのに充分な硬さがある一方で、口部分の切断はやりやすい——つまり硬さと柔らかさのバランスがほどよいことと、熱伝導性が高く樹脂を流し込むのに都合がよいことの2点が主な理由です。
この方法によって、しっかりと機械ごと床を上げることに成功しました。このように、難しい条件でも工夫次第で施工ができるケースがあります。むしろ、お客様の抱えるさまざまな条件のもとで、どのように上手く施工を行うか工夫することこそ、「操業を止めない」沈下修正の重要なポイントだと思っています。