小遣い月3万円。「昼飯はコンビニおにぎり」
東京都内の中堅メーカーに勤める山田健一さん(仮名・59歳)は、年収800万円のサラリーマンです。結婚は42歳と遅く、妻と高校2年生の娘の3人暮らし。現在も住宅ローンの返済が続いており、毎月の支出は家計を握る妻に任せてきました。
「お金のことは全部、妻に任せています。小遣いは月3万円。昼はコンビニのおにぎり2個。飲み会は年に数回だけですね」
タバコもやめ、散髪は千円カット。クレジットカードも妻管理のため、自分で何かを買うこともありません。
「子どもが小さい頃は“今が踏ん張りどころだ”と思って我慢できた。でも、気づけば定年目前で、何も自分の手元には残っていない。通帳も見たことがありません」
家計について話をしようとすると、妻はいつもこう答えていたといいます。
「だいじょうぶ。ローンもあと少しだし、退職金もあるんでしょ。貯金もちゃんとやってるから」
山田さんも「今さら細かく聞くのは失礼かもしれない」と思い、それ以上深くは踏み込まずにきました。
「僕としては、娘を大学に行かせたいというのが一番の願いだった。生活水準を上げるより、将来のために貯めてくれていると信じていたんです」
そんな山田さんが不安を覚えたのは、会社で受けた「ライフプランセミナー」でした。定年後の家計シミュレーションや、退職金と年金の試算を聞くなかで、「このままで本当に大丈夫なのか?」という思いが芽生えたのです。
「その日の夜、思い切って“今の貯金がいくらあるのか教えてくれる?”って聞いてみたんです」
すると、妻から返ってきたのは想定外の答えでした。
「貯金? うーん…ちゃんとした金額はわからないけど、教育費とかでだいぶ使っちゃってるかも」
さらに驚いたのは、住宅ローンの完済予定が“70歳過ぎ”だったこと。
「えっ、退職までに払い終えるんじゃなかったの?と聞いたら、“繰り上げ返済すると生活がきつくなるから”って…。そのとき本当に頭が真っ白になりました」
