正式に認められている外貨の国外留保
Question 中国企業の海外口座開設
中国の企業が国外で銀行口座を開設することはできますか。
Answer
・国企業(外資企業を含む)が中国外に銀行口座を開設し、外貨収入を国外に留保することが認められています。
・国外に外貨口座を開設した場合、所管の外貨管理局に登記する必要がありますが、実際にはこの登記がなかなか認められないという問題点があります。
1.国外口座の開設と外貨の国外留保
2008年に外貨管理条例が改定され、「国内機構、個人の受取り外貨は、国内に回収するか、あるいは、国外に留保することができる」と規定されたことにより、中国企業(内外資)が外貨収入を国外留保することが認められました。
これにともない、「輸出貨物収入の国外留保管理実施に関する問題の通知(匯発[2010]67号)」が公布され、国外口座の開設ルールが設定されています。
ちなみに、中国企業の国外口座開設自体は1998年より認められていました(境外外貨口座管理規定)が、当該規定は旧外貨管理条例にもとづいて施行されたものであるため、国外口座の開設は、あくまでも「暫定的な外貨保有のため」という位置づけでした。
これが、匯発[2010]67号により、正式に外貨の国外留保が認められたことにより、管理が規範化される動きがあります。
外貨管理局が敢えて登記を受理しない方針を取る理由
2.国外口座開設ルール
匯発[2010]67号は、口座の開設、運用に関し、以下のような制限を設定しています。
●口座を開設できる企業は、輸出外貨収入がある企業で、違法歴がなく、内部管理体制が構築されている企業であること
●口座を開設できるのは、中国の銀行の国外支店・現地法人、中国に支店・現地法人を持つ外資銀行であること
●口座数は5口座以内であり、留保できる金額は、登記済の輸出外貨収入の範囲内であること
●国外口座開設にあたっては、所管の外貨管理局で登記をするとともに、バンクステートメントの回収など、真実性の確保に努めなくてはならないこと
なお、外貨の国外留保期限は設定されておらず、企業のニーズにもとづいて国外に留保すること、中国内に回収することが認められます。
また、外貨管理局の許可なく国外に口座を開設した場合は、外貨管理条例の規定にもとづく処分の対象となります。
3.実務上の問題点
法律にもとづく国外口座開設手続は以上の通りですが、外貨管理局にヒアリングしたところ、国外口座の登記については、消極的な姿勢が伺えました。
国外口座の開設にあたり、外貨管理局での登記が義務づけられていたのは1998年に公布された「境外外貨口座管理規定」も同様でしたが、外貨管理局での登記証を提示しなくても国外で銀行口座は開設できることから、無登記で開設する事例が多く(このような口座の多くは、簿外口座となっているものと推測される)、外貨管理局もそれを把握しきれない状況です。
このため、外貨管理局も登記を受理すると、多数の無登記口座の存在を認識せざるを得なくなるため、敢えて登記を受理しない方針を取っている場合が多いものと推測されます。
結果として、国外口座に関しては、実務上は開設登記が困難な状況です。
[関連法規]
日本語:外貨管理条例(国務院令[2008]第532号)
中国語:外汇管理条例(国务院令[2008]第532号)
日本語:境外外貨口座管理規定
中国語:境外外汇账户管理规定
日本語:輸出貨物収入の国外留保管理実施に関する問題の通知(匯発[2010]67号)
中国語:关于实施货物贸易出口收入存放境外管理有关问题的通知(汇发[2010]67号)