中国にはない「エスクロー口座」制度
Question エスクロー口座
中国にはエスクロー口座制度はありますか
Answer
・エスクロー口座とは、特定事業から生じた現金収入を、目的に応じた引出しに限定するように管理された口座ですが、現時点では中国にこの制度はありません。
・エスクロー口座と同様の効果を生み出すためには、銀行口座の引出し権を金額に応じて設定するなど、運用面での対応が必要になります。
特定案件に紐付いた事業(プロジェクト)を行うための会社を設立する場合、その支出を特定の内容(融資の返済、保証料の支払い、特定コストの充当など)に限定したい、もしくは、引出しに優先順位をつけたい場合があります。
このような場合に開設する口座をエスクロー口座といい、資金の引出しを、目的に合致した内容に限定するよう、銀行、信託銀行が管理を行います。
残念ながら、中国においては現段階ではこういった制度がないため、エスクロー口座の開設はできません。
銀行口座の「引出し権」を金額に応じて設定
実務面で対応するためには、銀行口座の引出し権を、金額に応じて設定することです。
中国で会社を設立する場合は、特定目的会社であっても、董事長、総経理などを任命する必要があり、預金の引出し権についても、一義的には、現場管理を行う人間に権限を付与せざるを得ないでしょう。そのうえで、一定の金額を超過する場合は署名者を一名追加する、さらに、一定額を超過する場合には、もう一名追加するなど、金額が多額になる場合は、事業参画当事者複数のサインを必要とすることで、引出し権を制限するのがこの方法の趣旨です。
ただし、この方法の難点は、銀行での実務が煩雑となることから、銀行が応じてくれる場合と応じてくれない場合があることや、当事者が多数になる場合は、署名権の設定が難しいことです。
何れにしても、エスクロー口座制度がない以上、銀行口座の引出し権を制限する方法や、社内規定(定款・財務管理規定)にルールを織込むなど、運用面での対応しか方法はありません。