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30年ローン完済…約束された「安心の老後」に安堵する夫婦
場所は兵庫県神戸市の海沿い。田中誠さん(仮名/63歳)は、妻の奈緒子さん(仮名/62歳)と、郊外にある築31年の戸建て住宅に暮らしています。なお、2人の子どもはすでに独立し、家庭を持っています。
木造の自宅は、最寄り駅からバスで数分行ったところにあり、延床95m2。30年で組んだ住宅ローンは、誠さんが3年前、定年退職した年に完済しました。
「やった! 完済だ! 本当に長かった……」
「お疲れ様。本当に頑張ったわね……。涙が出そう。これからはお金の心配をせず、ゆっくり過ごせるわね」
退職金は1,000万円弱で、65歳から受給予定の年金額は、2人あわせて手取りで月22万円ほど。老後の暮らしに不安はないと、安心していた田中さん夫婦でした。
しかし、完済から3年ほど経ったある冬の朝、事態は一変します。
水が出ない…相次ぐ「設備の寿命」
朝食をつくろうと奈緒子さんが台所の蛇口をひねったところ、水が出ないのです。水道業者が床下をのぞき込み、口を結びます。
「配管がだいぶ傷んでいます。部分補修で当面は持ちますが、築年数を考えると交換を視野に入れたほうがいいかと……」
見積もりは配管まわりで38万円、古い給湯設備の交換で33万円。71万円の見積もりに尻込みし、交換はいったん見送りましたが、春になると今度は外壁の色あせと細かなひびが目立ち、塗り替えを勧められました。見積もりは足場込みで150万円前後です。
さらに、夏前には2階の寝室のエアコンが故障し、入れ替えで13万円。秋口には雨樋(あまどい)の歪みで庭に水たまりができてしまいました。相次いで舞い込む自宅設備の修繕で、このままでは家計は火の車です。
「ちょっと落ち着こう。もらえる年金が月22万円で、いまの生活費がだいたい月18万円くらいで……」
「そうね。光熱費と食費で大半が消える。残りの4万円も、冠婚葬祭費と日用品費でほとんどなくなってしまうでしょう。そこへ来て、こんなふうに毎月家の修繕をしていたら、貯金もなくなってしまうわ」
「ようやく住宅ローンが終わったと思ったのに、お金が出ていく一方なのはどうしてだろう……」
このほかにも、固定資産税と都市計画税で年11万円。火災保険は5年一括で9万円強。庭の剪定や害虫処置で毎年数万円。そこへ連鎖的に訪れる設備の寿命……。築年数が進み、10年に1度程度まとまった修繕があるのは覚悟していた夫婦でしたが、実際にはこまごまとした修繕が年中ランダムにあり、気が休まる暇はありません。
「このままでは、『老後破産』の可能性すらあるぞ……」
不安になった誠さんは、妻を連れてファイナンシャルプランナー(FP)に相談することにしました。
