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コロナ禍を経て、リアル勤務回帰。脱リモートがある程度進むも…
コロナ禍が落ち着きをみせるにしたがって街中に人の姿が戻ってきました。インバウンドの盛況もあってか、観光地などは人で溢れかえっています。さらに、オフィスにも人が戻ってきました。コロナ禍で多くのワーカーがリモートワークに切り替え、オンライン会議が普通の会議体として認められるようになりましたが、現在では多くの企業で従業員に対して、以前のリアル勤務に戻るよう促しています。
とはいえ、世の中が完全にリアル勤務に戻ったのかと言えばそういうわけではありません。国土交通省による都市鉄道の混雑率調査結果(2023年度)によれば、東京、大阪、名古屋における主要鉄道の混雑率はコロナ禍前に戻りつつあることがわかります。ところが、コロナ前の2019年度のデータと比較すると、東京で27ポイント、大阪で11ポイント、名古屋でも9ポイントの差があります。ほぼ通常勤務に戻った状態であるにもかかわらず、リアル勤務に完全に戻ったわけではなさそうです。
首都圏の代表的な鉄道会社である小田急電鉄の決算説明資料をみてみましょう。コロナ前の2019年度の通勤定期利用者数は34万9361人。コロナ禍で通勤を見合わせる人が増えた2021年度でその数は25万7710人まで落ち込みます。そしてアフターコロナともいえる2023年度の数値をみると28万1953人。コロナ前の8割の水準にとどまっています。通勤定期収入も2019年度に比べて85%までにしか回復していません。
このデータは、何を意味しているでしょうか。
長きにわたって続いたコロナ禍で、あらためてリアルで働くことの重要性が認識されました。その一方で、業種や職種によってはリアルで働く必要はなく、自宅やコワーキング施設などを利用したリモートワークで十分職務を遂行できることがわかったということです。
現在、鉄道会社は通勤客が完全に戻ることを期待するよりも、新たな顧客層の開拓に余念がありません。それは、アフターコロナによって急激に回復し始めた国内旅行客やインバウンドです。小田急電鉄では沿線に江の島や箱根湯本といった観光地を抱えています。片瀬江ノ島駅の1日平均乗降客数は2023年度で1万9067人と2019年度(1万9828人)の水準にほぼ戻すことに成功しています。また通勤客は通勤定期で運賃が割引されますが観光客は一部フリー切符があるものの実収が高い効果もあります。
今後リモートワークは社会の中でどうやら着実に一定の割合を保ちそうです。そしてこの先、若者の減少がワーカーの数を確実に減らすことになります。鉄道会社の通勤客を主体としてきた戦略にも、大きな変化が起こることが想定されるのです。


