戦後80年と、アベノミクス以降の金融緩和。この二つの大きな節目が、日本の「富裕層」の勢力図を大きく塗り替えようとしています。本記事では、牧野知弘氏による著書『不動産の教室 富裕層の視点が身につく25問』(大和書房)より、「新富裕層」の実態を解説します。

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「新富裕層」の台頭で盛り上がる不動産投資

従来の富裕層にとって、アベノミクス政策による大規模金融緩和は、ある意味で勝手に資産額が膨らんでいったともいえるものでした。株式も不動産投資信託(JREIT)も買い支えてくれるし、低金利状態を延々と継続してくれたおかげで、外貨預金も膨らみ、円安が外資マネーを呼び込み、さらに相場が上昇していく。文句のありようがない政策に映ったと思われます。

 

いっぽうで見逃せないのが、この空前のチャンスを迎えたマーケットへ勇気をもって参戦し、その結果として新たに富裕層の仲間入りを果たすことができた人たち、「新富裕層」の誕生で、これまでの投資マーケットの中では新鮮な存在となりました。

 

新富裕層には2つのカテゴリーがあります。

 

ひとつは親の財産を相続した人たちです。戦後80年が経過し、人口が急増した日本人は今、多死・大量相続時代を迎えています。高齢社会になり、亡くなる人の多くが80歳代以上となると、資産を相続する子の年齢層も50歳代から60歳代になります。したがって親から多くの資産を相続しても、特に消費を活発に行う年代ではありません。むしろ親から譲り受けた資産を大事に貯蓄して老後に備える、「静かな富裕層」です。

 

他方、大規模金融緩和で緩んだ金融機関から、多額の資金を借入れて積極的にリスクを取りに行った人たちがいます。この人たちの多くが普通の企業に勤めている年齢層で30歳代、あるいは40歳代前半までの人たちです。彼らは、自分たちの給与所得だけで生活するのでは、今後心もとない。人生の成功をつかみ取るには、自身の能力をグレードアップすることが必要であるだけではなく、投資のリテラシーを深めて、「金がカネを生む」を地で行こうとする人たちでした。

 

多くが独身者で、小口投資では株式や債券に投資するだけでなく、借入金(レバレッジ)をおこして、やや大きめの投資としてはワンルームに代表されるような区分所有マンション、築年の古いアパート一棟などを取得し、これを運用資産としました。彼らの多くが令和(2019年)以降に不動産マーケットに参戦した人たちです。

 

日本の会社ではいまだに副業禁止を掲げるところが多いのですが、不動産投資だけはどの会社でもスルーされる傾向があります。幸い令和になってからの不動産マーケットはコロナ禍の一時期を除いて絶好調です。むしろ失敗するほうがおかしなマーケットの中、不動産収入で1億円に達するような「億り人」が続出しました。

 

会社を辞めて本格的に不動産投資家になる人も増えています。わちゃわちゃした元気のある新富裕層の誕生です。

 

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※本連載は、牧野知弘氏による著書『不動産の教室 富裕層の視点が身につく25問』(大和書房)より一部を抜粋・再編集したものです。

不動産の教室 富裕層の視点が身につく25問

不動産の教室 富裕層の視点が身につく25問

牧野 知弘

大和書房

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