昭和スタイルを貫く営業部長の前に、新世代の若手登場
Aさん(仮名・当時54歳)は、中部地方の大都市に勤めるサラリーマン。大学卒業後からずっと営業一筋でキャリアを積んできました。年収は850万円、数字でも存在感でも社内の中心にいた人物です。
入社当時は、営業マンとしての心構えやマナーを上司や先輩から厳しく叩き込まれるのが当たり前。時には罵倒されながら、それでも自分が着実に力をつけていることを実感していました。
20代後半になると、営業部で上位の成績を出し続け、後輩の育成にも力を注ぐように。社内では「頼れる先輩・上司」として一目置かれる存在になり、営業部長のポジションまで上り詰めたのです。しかし、時代の空気は少しずつ変わっていました。
今の若手は「ついてこい」型ではなく、自分の考えやスタイルを大事にします。商談では顧客との関係性を重視し、会議では合理的に意見を交わす。そんな環境の中で、Aさんの昭和型マネジメントは徐々に浮いていきました。
それでもAさんは、「厳しく叱ってでも部下を伸ばす」という姿勢を崩しません。結果として、叱咤に耐えられず静かに去っていった部下も少なくありませんでした。
そんな職場に大きな変化が起きたのは、26歳の若手営業マンBさんが転職してきたときでした。入社後、初めてチームミーティングに参加したBさんは、なかなか契約がとれない部下を厳しく追及するAさんに、臆することなくこう言ったのです。
「Aさん、その言い方はさすがにパワハラじゃないですか? この会社、今どきこんなやり方してるんですか?」
会議室は凍りつきました。誰も声に出さなかった不満が、ついに表面化したのです。当然ながら、Aさんに対して不満を抱いていた社員は少なくありません。この一言をきっかけに、Aさんは部内で孤立するようになっていきました。
