「地元に残った同級生には勝っている」と思っていた
都市銀行に勤務する中村健介さん(仮名・45歳)は、有名私立大学の経済学部を卒業後、都内の大手銀行に入行。20代〜30代前半は仕事漬けの日々で、「地元に残った同級生たちには正直、勝っていると思っていた」と振り返ります。
「実家を離れ、都内でスーツを着て働く自分に、誇らしさのようなものを感じていました。当時の地方はまだ“上京組=成功”という空気も強かったので」
現在は本部勤務の中堅管理職。年収はおおよそ1,100万円。一見、十分な額に見えますが、都内での生活費や教育費、住宅ローンを考えると、「決して余裕はない」といいます。
「月々の手取りは60万円台。子ども2人の教育費に15万、住宅ローンに18万、固定資産税に保険。ボーナス頼みで、いわゆる裕福な暮らしぶりではないです」
ところが、久々に地元で開かれた高校の同窓会で、思わぬ一言を耳にすることになります。
「今、年収950万くらいかな」
そう笑って語ったのは、地元の国立大学を出て、家業である製造業の会社に入った同級生・佐野和也さん(仮名)でした。現在は「専務取締役」という肩書きで、営業から経営まで幅広く関わっているといいます。
「親の代からやってる町工場だけど、今は海外の取引も増えててね。ちょっと景気がいいんだよ」
中村さんは思わず聞き返しました。
「950って、賞与込みで?」
「うん、年間ベースで。手取りだと月に65万くらいだけど、会社の車もあるし、家は実家をリフォームしてそのまま。出ていくお金が少ないんだよね」
中村さんは、会場のざわめきのなかで、自分の心が静かに波打つのを感じていました。
