(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親が、就職や生活に苦しむ子どもを支え続ける――。少子高齢化と非正規雇用の増加が進む今、こうした“親子共倒れ”の構図は、決して珍しいものではありません。善意の支援が長引くことで、老後資金を取り崩し、取り返しのつかない状況に陥るケースも増えています。今回は、ある母子家庭の10年を追います。

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「借金完済まで何年もかかりました」

最初の借金を返済する前に、佳子さんは2回目の融資を申し込みました。「今回こそ最後」と思いながらも、息子の自立の兆しは見えないまま、借入額だけが膨らんでいきました。

 

「息子に頼られることで、どこかで嬉しい気持ちにもなっていたのかもしれません。でも、年金がどんどん減っていく現実を前にして、ようやく“これはまずい”と思いました」

 

その後、福祉相談窓口や弁護士の力を借り、返済計画を立て直し、ようやく完済したのは借り入れから9年後のことでした。

 

息子とは今も同居を続けていますが、就労状況は安定していないといいます。

 

「年金担保融資に手を出さず、もっと早く突き放していれば…と、今では思います。でも、母親って、なかなかそうはできないんですよね」

 

「年金担保融資制度」は現在、新規受付が終了しているものの、同様の“年金を担保にした借入れ”に類する民間業者のサービスには注意が必要です。借金で老後資金を食い潰すリスクを避けるためにも、自治体の生活支援窓口や社会福祉協議会の相談サービスなどを、早い段階から活用することが望まれます。

 

家族を思う気持ちは尊いものです。しかし、支える側が崩れてしまっては、誰も幸せにはなれません。親もまた、安心して老後を送る権利がある――その当たり前の事実に、もっと社会が目を向ける必要があるのではないでしょうか。

 

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