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会社の4分の1にあたる幹部ら7名の“一斉欠勤”
そのうち、私たちの話し声を聞きつけて、別の作業場からも社員たちが集まってきました。
「一体全体どうなってるんだろう」
「これじゃあ仕事を始められないよ」
今の時代であれば、その場でスマホを取り出して直接本人たちに電話してみるのでしょうが、当時はまだ携帯電話すらなかった時代です。電話といえば固定電話しかありませんでした。
そのうち、この場でいくら話し合っていてもらちが明かないので、みんなで事務所棟まで行ってみようということになりました。事務所棟の1階にある総務部に行けば何か情報が入っているかもしれないと考えたからです。
しかし総務部の2人の社員たちもこの会社で今何が起きているのか、まったく把握できていませんでした。結局、総務部に出向いて明らかになったことは、技術部長、工場長、製造課長、女性部リーダーと若手幹部候補の男性社員3人の計7人が無断欠勤しているという事実だけでした。その当時の社員数は27人でしたから、その4分の1強がいきなり欠勤したことになります。それも社内で要職に就いている者ばかりでした。
ただちに総務部のスタッフが欠勤している各人の自宅に電話を入れましたが、7人とも直接本人が電話に出ることはなく多くは留守番電話で、家人が電話に出た場合も「さあ、本人は今日もいつもどおり会社に出社しましたけど……」という曖昧な答えが返ってきただけでした。
午前9時を過ぎると、それまで金型の部屋に閉じこもっていた社長(私の父)が事務所棟にやって来ました。「平日なのに工場がまったく稼働していない」という異常事態にようやく気がついたようです。社長にしても、技術部長以下の幹部連が無断欠勤している理由は皆目見当がつかず、今どこで何をしているかもまったく分かりません。とはいえ、今日は今日でやるべき業務があり、納期が迫っている製品もあるため、行方不明7人の所在確認は総務部のスタッフに任せ、製造部門のメンバーはとにかく工場に戻ろうということになりました。
問題は、それぞれの作業場がリーダー不在の状態に陥っていることです。普段より慣れている仕事であれば、リーダーがいなくても作業は可能ですが、何かしら不具合やトラブルが発生した場合、それに迅速に対処できる人間が必要になります。また、その日から新たに始まる作業もあり、その段取りの構築や進行管理は現場の責任者が行わなければなりません。そこで、この問題については、工場のすべての業務に通じている社長が各作業場を巡回して、順次指示を出していくことになりました。
