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親会社社長との対決
ロストワックスの工場をフィリピンに、MIMの工場をタイに立ち上げたことで、私の中では将来に向けてのビジョンがかなり明確に見えてきました。フィリピン工場もタイ工場も、親会社であるM製菓からは一銭の援助も受けずに設置しており、しかも大株主であるM製菓会長から「海外工場は好きに作っていい」というお墨付きまでもらっています。あとは、営業部門を確保するだけです。たとえ現在のキャステム本体に親会社から役員を社長として送りこまれたとしても、ロストワックス工場+MIM工場+営業部門という最低限の体制さえあれば、確実に生き残っていくことができます。
そこで、2002年に立ち上げたタイ工場が軌道に乗ったのを見届けたうえで、私は同じ年にキャステムコーポレーションを愛知県名古屋市内に設立しました。この会社は製造部門を持たない完全なる営業会社で、事業内容はキャステムで製造するロストワックス精密鋳造製品とMIM製品の企画・販売。代表取締役社長は私です。この会社の設立には、キャステムの主要取引銀行が味方についてくれました。
この営業会社は事実上キャステムのグループ会社なので、本来であれば、キャステムの株主総会による決議を経て、それも株全体の8割を持つ親会社と会長の承認を得てから会社登記すべきでしょう。しかし、これまでの経験を踏まえ、今回に限っては従来の意思決定プロセスとは異なる手順で進めることとなりました。この新しい会社の存在が親会社側に知られれば、彼らは訴訟などなんらかのアクションを起こすはずですが、それについては私なりの対策をすでに考えていました。
かつて私たちの会社に在籍していた元技術部長らのグループが、得意先企業に転職していったのが1981年のことでした。あれから20年以上も経って、あの元技術部長らのグループが亡霊のように再び私たちの目の前に現れようとしていました。なんでも、M製菓の現社長(大株主の会長の長男)がキャステムからの私の追い出しを画策していて、私の後釜に元技術部長を据えるつもりのようで、ひそかに会合を持っていたのです。おそらくそれに関連して、部品販売の商社もすでに立ち上げていました。
そうした計画を、私はある情報筋から聞いて知っていたので、彼らの行動に関する情報はすべて記録しておいたのです。また、かつて裏切り行為をはたらいた元技術部長一派の行動も記録に残しているので、もし、私が勝手に会社を起こしたことを糾弾してくるなら、親会社と会長がこれまでキャステムをないがしろにして好き勝手やってきたことを、すべて白日の下にさらすつもりでした。
営業会社の設立を機に、ついに訪れた交渉の機会
営業会社キャステムコーポレーションを設立して2年後の2004年10月、キャステムの親会社であるM製菓の現社長が突然私に面談を求めてきました。ついにキャステムコーポレーションの存在に気がついたようです。
面談は、私としても望むところでした。
キャステムの前身であるキングインベストが1970年に創設されて以来、親会社のM製菓は私の父の“人の良さ”につけ込み、当然与えられるべき権利を与えず、これまで34年間にわたって私たちからいわれなき搾取を続けてきました。精密鋳造機械を自作して実質的に会社を立ち上げたのは父でした。しかし、いくら売上を上げても、その多くは親会社と大株主である親会社会長に吸い上げられてきました。これでは、会社を大きく発展させることはできません。
一例を挙げれば、キャステムの敷地はすべて親会社の所有になっており、私たちに売ってほしいと34年間言い続けても結局売ってはもらえず、年間1,500万円の借地料を34年間も払い続けてきました。支払った総額は約5億円で、これからも払い続けなければなりません。私たちキャステムがこれから自分の足で力強く歩いていくためには、親会社からの独立がどうしても不可欠です。親会社社長(私にとってはいとこ)との対決は、親会社とのしがらみを断ち切る絶好の機会だと思いました。
