自分では管理もしないのに、“売らない権利”だけ主張する兄
「兄とはもう、二度と口をきかないと思います」
そう語るのは、都内在住の会社員・松田隆さん(仮名・52歳)。5年前に母親を亡くし、兄と2人で相続した地方の実家をめぐり、兄弟関係が完全に断絶してしまったといいます。
きっかけは、空き家となった実家の売却をめぐる意見の対立でした。
「俺は売らない。あの家は残しておきたい」
隆さんの実家は、関東近郊の郊外住宅地にあり、最寄り駅からはバスで20分ほど。築50年を超え、空き家となってからも一度も使用されていません。
「草木が伸び放題で、屋根の瓦も崩れかけていて。近所の方から『危ないよ』と連絡をいただくたび、実家に行って草刈りや補修をしています。費用も時間も全部、私持ちです」
母の死後、遺言書はなく、兄弟で2分の1ずつ法定相続した形に。隆さんは「空き家として放置するよりは、売って現金化し、きちんと分けよう」と提案しましたが、兄(56歳)は真っ向から反対したといいます。
「『売るなんて親不孝だ』『俺はあの家に思い入れがある』と感情的に反対されて、それ以降はもう話が進まなくなりました。自分では管理もしないのに、“売らない権利”だけ主張する。本当に理不尽です」
不動産を共有名義で相続した場合、売却や賃貸などの手続きは共有者全員の合意が必要です。1人でも反対すれば売却は不可能。放置状態が続けば、空き家による倒壊や近隣トラブル、さらには固定資産税などの維持コストも発生します。
「名義は兄弟半々なのに、兄は一切お金を出しません。毎年8万円ほどの固定資産税はすべて私。草刈りや雨漏り修繕などで、累計50万円以上はかかっていると思います」
その都度兄に負担を求めたものの、「そんなの好きでやってるんだろ」「俺は知らない」の一点張り。ついには連絡が取れなくなり、兄弟間は完全に断絶したといいます。
