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健康診断の結果で注目すべき項目とは?
骨粗鬆症の診断には骨量(骨密度)や骨質を調べる必要がありますが、それらを測定するには特殊な検査機器を備えた医療機関を受診しなければなりません。地域によってはそうした医療機関を見つけることが難しく、骨粗鬆症は気になるけれど骨密度を測定してもらえないという人も多いと思います。
そのような場合には、定期的に受けている健康診断の結果から、骨粗鬆症のおそれがあるかどうかを推測することができます。
具体的には、健康診断で行う生化学検査の結果から骨粗鬆症を発症している可能性を調べるのです。もちろん、骨の強さをダイレクトに確認する骨密度の検査に比べ、血液検査から骨粗鬆症の可能性を推測するのは精度の面で劣るかもしれません。しかし、骨密度を測定できない場合に代用するにはとても便利な方法です。
なんらかの疾患で継続的に治療を受けている人は定期的に血液を採取し、生化学検査を受けることもあるでしょうから、その結果から骨粗鬆症を発症していないか、こまめにチェックすることは予防の面でも役立ちます。
生化学検査とは、血液を遠心分離器にかけて血清だけを分離し、血清中の物質を化学的に分析する検査のことをいいます。体に異常はないか、体内で炎症が起きていないか、栄養状態はどうかなどを細かく調べることができ、疾患を予防したり、治療戦略を見直したりするのにも用いることができます。
生化学検査ではさまざまな項目を検査しますが、そのなかで骨粗鬆症と関連が深いものはALP(アルカリフォスファターゼ)という項目です。
ALPとはリン酸化合物という栄養素を無機リンとアルコールに分解する酵素のことです。肝臓、骨、小腸や胎盤に多く含まれていますが、もともと肝臓から胆汁中に排出されるため、生化学検査の結果、ALPの数値が高くなると胆石やがんなどにより胆汁の流れ道である胆道に異常が起きているのではないかと推測できます。
そのため一般には、ALPは肝臓や胆汁の流出経路に異常がないかどうかを調べるための検査項目として認識されています。数値が高くなれば肝炎や閉塞性黄疸(おうだん)など、肝臓や胆道の病気の可能性が疑われます。
しかし実は、ALPは骨にも多く含まれているため、ALPの数値の異常は骨にトラブルが起きていることの合図ともとらえることができます。
骨組織に存在するALPのことをBAP(骨型アルカリフォスファターゼ)といい、多くが骨芽細胞に存在します。そのためBAPは骨を新しく作る力を反映する指標(骨形成マーカー)として用いられ、骨芽細胞の機能が亢進し、骨形成が活発に行われているときには血中BAPが上昇します。反対に骨芽細胞の機能が衰え、新しく骨を作る力が弱くなっているときには血中BAPが低下します。
こうした性質を利用し、BAPは骨肉腫やがんの骨転移、骨粗鬆症など骨に生じる病気の診断やスクリーニングに用いられています。
ここで大事なことは、骨粗鬆症は骨芽細胞の機能が亢進することもあれば、破骨細胞の機能が優位になっている場合もあるということです。通常、骨肉腫やがんの骨転移の場合にはBAPが上昇しますが、骨粗鬆症の場合には血中BAPが異常低値を示すこともあれば、異常高値を示すこともあります。そのため数値を見るときには注意が必要です。
また、生化学検査の結果ではBAPだけが特異的に調べられることはあまりなく、ほとんどがALPの数値で示されます。一般にALPは肝臓や胆汁の経路の異常を示す数値として認識されているため、この数値が高かった場合には「肝臓病の可能性がありますね。消化器内科を受診してください」と医師から促されるかもしれません。
しかし実際のところALPはBAPとして骨にも多く存在するため、ALPの数値が基準値を離れて異常値を示していた場合には骨の疾患も考えられます。そのため生化学検査の結果でALPが異常値を示している場合には、肝臓や胆汁の経路だけを疑うのではなく、骨粗鬆症をはじめ骨の異常にも思いを巡らすことが必要です。
ただし、骨代謝の亢進しない骨粗鬆症の場合には、ALPは変化しないため、必ずしもALPの数値だけですべての骨粗鬆症を発見することはできません。そのためほかの症状などから骨粗鬆症が疑われる場合には血液検査だけでなく、骨密度などを測定することが必要になります。
