(※写真はイメージです/PIXTA)

要介護要因となり得る重大疾患「骨粗鬆症」。放置すれば心筋梗塞のリスクが健常者の3.5倍も高くなるなど、合併症のリスクが上がり、また椎体骨折や大腿骨近位部骨折が生じると、5年後の死亡率ががんや脳梗塞より高くなるなど、実に恐ろしい病気です。一方、痛みや違和感といった自覚症状がないために、気づいたときには深刻化してしまっているケースが少なくありません。本記事では、大村文敏氏の著書『ねこ背が気になったら骨粗鬆症を疑いなさい』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、知られざる骨粗鬆症の実態と、日頃の生活習慣の改善から取り組める予防方法について解説します。

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背中の弯曲(わんきょく)は骨粗鬆症の兆候、「年だから」と安易な決めつけは危険

人の体は加齢により衰えていきます。特に高齢者になると見逃せないのが骨の老化です。

 

本来、健康な人間の骨は非常に硬く、多少の衝撃にはびくともしません。鉱物などの硬さを示すのに用いる「モース硬度」という指標では、自然界の鉱物で最も硬いとされるダイヤモンドは「10」、鉄は「4」なのに対し、人の骨は「5」となっています。鉄よりも骨のほうが硬いのです。

 

ところが年齢を重ねると、骨の量が減り密度も下がることで、転んだり手を突いたりなどのわずかな衝撃でも骨折しやすくなります。医学的に、骨折のリスクを伴うような骨が脆い状態を「骨粗鬆症」と呼びます。骨粗鬆症財団の調べによると、2023年時点で国内には推計1590万人もの骨粗鬆症患者がいることが判明しています。

 

全体に占める骨粗鬆症患者の割合が多い高齢女性に絞ると、実に70代の3人に1人、80代では2人に1人が骨粗鬆症を発症している計算になります。

 

出所:『ねこ背が気になったら骨粗鬆症を疑いなさい』(幻冬舎メディアコンサルティング)より抜粋
[図表1]骨粗鬆症性による骨折発生率 出所:『ねこ背が気になったら骨粗鬆症を疑いなさい』(幻冬舎メディアコンサルティング)より抜粋

 

骨粗鬆症が高齢者に広まっている背景には、病気の性質が大きく絡んでいます。それは骨粗鬆症が進行していても、当人が痛みや違和感を覚えないという点です。

 

基本的に骨粗鬆症は、骨粗鬆症検診や整形外科などを受診しなければ分かりません。こうした特性から、骨粗鬆症はサイレント・ディジーズ(静かな病気)とも呼ばれます。症状自体は非常にゆっくりかつ密かに進行するため、高齢になって判明するケースが多いのです。

 

そしてなにより怖いのが「脆弱(ぜいじゃく)性骨折」です。脆弱性骨折とは、健康な状態であれば問題にならないような軽い衝撃により生じる骨折をさします。つまり、骨粗鬆症の人が骨を折ると、それは脆弱性骨折と診断されます。骨粗鬆症が進んでいる人は、荷物を抱えながら持ち上げたり、軽く尻餅をついたりする程度でも、背骨が折れる恐れがあります。

 

脆弱性骨折でもうひとつ厄介なのが治療の難しさです。通常の骨折の場合、時間の経過に伴い、折れた断面同士で接合されます。しかし、骨粗鬆症による骨折の場合、骨の密度が低いため、折れた部分がいびつな形状になりやすいのです。

 

たとえば背骨が折れると、空き缶を潰したように上から圧迫した形となることがあり、これを脊椎圧迫骨折といいます。一度骨が変形すると、接合しても元の状態には戻りません。脊椎圧迫骨折は瞬時に起こるのではなく、徐々に潰れていくことがあるため、患者が骨折の痛みを自覚できないことが多々あります。

 

通常、脚や腕、指などの骨が折れれば冷や汗が出るほどの痛みが走ったり、歩行や起立が難しくなったりして、日常生活を送るのに支障をきたします。しかし、背骨に脆弱性骨折が生じても、こうした自覚症状が得られないため、当人だけでなく周囲も見過ごしてしまう場合がよくあります。

 

骨粗鬆症を放置すれば、脆弱性骨折を繰り返して背中が曲がっていき、最終的には身長も縮みます。高齢者の猫背を「年を取れば背中が丸くなるのは仕方がない」などと軽くとらえるのは、非常に危険です。

 

 

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本連載は、2025年6月20日に刊行された大村文敏氏の著書『ねこ背が気になったら骨粗鬆症を疑いなさい』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部抜粋・再編集したものです。

ねこ背が気になったら骨粗鬆症を疑いなさい

ねこ背が気になったら骨粗鬆症を疑いなさい

大村 文敏

幻冬舎メディアコンサルティング

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