(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者を狙った投資詐欺。巧妙な話術や「元本保証」「高配当」といった甘い言葉により、慎重なはずの人でも知らぬ間に大金をだまし取られるケースが後を絶ちません。家族が気づいたときにはすでに手遅れという事例も多く、親世代との日頃のコミュニケーションがますます重要になっています。

「そんなはずじゃなかったのに…」母の口から漏れたひと言

会社員の伊藤健一さん(仮名・55歳)は、ある日、実家で83歳の母・澄子さん(仮名)がポツリと漏らした言葉に、耳を疑いました。

 

「お金、もうないのよ。全部、預けちゃったから…」

 

――え? 預けたって誰に? いくら?

 

話を聞けば、「高齢者向けの資産運用サービス」と名乗る業者から何度も電話があり、「年金だけでは不安でしょ。月5万円ずつでも不労所得が入ってくるようにしませんか?」と勧誘されたというのです。

 

澄子さんは「少しなら…」という気持ちで始めたつもりだったと話しますが、知らぬ間に投資額は1,200万円にまで膨れ上がっていました。

 

実は健一さんは数ヵ月前、母の電話に頻繁にかかってくる怪しい投資の話に気づき、迷惑電話登録や着信拒否の設定を済ませていました。「これでもう大丈夫」と思っていた矢先、母は別の番号からかかってきた業者に心を許してしまっていたのです。

 

相手は、やたらと親身で丁寧な口調で話す男性。「信じていい人だと思った」と母は振り返ります。

 

送られてきたというパンフレットには、立派な建物の写真や「上場予定」という言葉が並び、「元本保証」「年間6%の配当」といった甘い誘い文句も。澄子さんは、「老後資金として少しでも増やせたら…」と、定期預金を解約し、複数回に分けて振り込んでしまったといいます。

 

しかし、配当の入金予定日を過ぎても振り込まれる気配はなく、業者とも連絡がつかなくなったことで、詐欺だったことを悟りました。

 

「お金が戻らないことより、子どもたちに言えなかったことが苦しかった」と語る澄子さん。健一さんも「まさか、母がそんな大金を渡していたなんて」とショックを隠せません。

 

詐欺被害は警察に相談済みですが、犯人の特定は難しく、返金の見込みも立っていない状況です。

 

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