「こんなことで贈与になるなんて…」と肩を落とす母
東京都に住む主婦の松原綾子さん(仮名・66歳)は、娘夫婦の新居購入にあたって「ちょっとした援助」のつもりで150万円を渡しました。
「子育てもしながらの新生活は大変だろうから、家具でも家電でも好きなものを買って」と、引越し祝いのような気持ちだったといいます。
しかし、数ヵ月後、松原さんの娘の元に税務署から「贈与税に関するお知らせ」が届きました。水色の封筒に、確定申告の必要性が記された書類と説明書が入っており、「申告のご案内です」とはっきり記載されていたそうです。
贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に、個人から110万円を超える財産をもらった場合に発生します。松原さんのように、「ちょっとした援助」や「気持ち」のつもりで渡したお金も、税務署からすればれっきとした“贈与”です。
特に住宅購入や結婚といった大きなイベントでは、親族からのまとまった金銭援助が起こりやすいため、税務署が重点的にチェックする対象となります。
今回のケースで問題となったのは以下の点です。
●110万円の基礎控除を超える現金の贈与は、原則として申告と納税が必要
●引越し祝い・家具購入資金・住宅の頭金など、名目に関係なく現金で渡せば「贈与」と判断される
●「親から娘」「祖父母から孫」といった家族間でも、贈与税は課税対象になる
●税務署は不動産登記や銀行口座の資金移動などから贈与の存在を把握している
●教育資金・住宅取得資金などの「非課税特例」は要件と申告手続きがある
好意のつもりがトラブルに…金額と名目に注意を
松原さんのケースでは、150万円のうち110万円を超えた40万円分が課税対象となり、贈与税として約3万〜5万円を納める必要がありました(※税率は状況によって異なる)。
「それくらいなら渡さなきゃよかったとはならないですが、よくわからず、迷惑をかけちゃったかな」と苦笑いする松原さん。
こうしたケースは決して珍しくなく、特に親族間の贈与は「無申告でも大丈夫」と誤解されやすいのが実情です。
親から子へのお祝い、お小遣い、援助金――どれも思いやりからの贈り物ですが、贈与税の制度上は、金額・名目を問わず申告対象になることがあります。
特に住宅購入や結婚といった人生の節目では、無意識に基礎控除を超える贈与をしてしまうことも。善意がトラブルに変わらないよう、事前に制度を理解し、必要な手続きを怠らないことが大切です。
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