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上海総合指数、10年ぶりの高値中国株式市場は上昇基調を維持しており、特に上海総合指数は2025年8月18日に終値ベースで2015年8月以来の10年ぶりの高値(3,728)に達した。
同日には国債先物の下落や10年・30年物国債利回りの上昇も見られたが、中国人民銀行はさらなる金融緩和には慎重な姿勢を示している。
株高の背景に「潤沢な家計資金」「投資熱の再燃」
株高の背景には、潤沢な家計資金と投資熱の再燃がある。中国本土の家計預金残高は過去最高水準に達し、低金利環境下で高リターンを追求する動きが広がっている。信用取引残高は2015年以来の高水準で、M1(マネーサプライ)は前年同月比で4.6%増と、2年以上ぶりの大幅伸長を記録した。
上海総合指数だけでなく、CSI300指数やCSI2000指数も上昇傾向にあり、CSI300は4月の安値から約16%上昇。小型株主体のCSI2000は8年ぶりの高値に達し、RSI(14日)は「買われ過ぎ」とされる70を上回る局面に至っている。
ニッセイ基礎研究所の原田哲志氏は、中国株の好調な理由について次のように分析する。
「中国株式市場は現在、比較的堅調に推移しています。背景には、2024年に政府が実施した不動産市場や経済刺激策、米国との貿易交渉で一時的に引き上げられた関税が交渉により大幅に引き下げられたことが、市場に好影響を与えていることが挙げられます」
懸念は海外資金流出…富裕層や企業の「地下銀行利用」も
一方でリスクも存在する。
「米中対立や輸出規制、外国人逮捕など、政治・規制面での不透明感は市場に影響を与える可能性があります。そのなかでも注目すべきは、中国国内からの海外資金流出です」(原田氏)
原田氏はさらに次のように説明する。
「中国政府は海外への資金持ち出しに制限を設け、1年間で個人あたり5万ドル(約700万円)までと定めています。しかし、富裕層や経営者の資産規模を考えると、この制限額は全体の資産のごくわずかに過ぎず、十分ではありません。制限を回避する手段として存在するのが『地下銀行』です。地下銀行は公式銀行ネットワークを通さずに資金を国外に移動させる非公式の送金ルートで、富裕層や企業が海外不動産や金融資産に資金を移す際に利用されています」
東京などの海外不動産市場、メインの購入者は中国人富裕層!?
実際、東京などの海外不動産市場では、中国の富裕層による購入が中心となっており、統計上の売買データに完全には反映されない資金流出も存在するとみられる。「ウォール・ストリート・ジャーナル」の推計によれば、地下銀行を通じた海外資金流出は年間約39兆円規模と試算されているという。
こうした資金流出は、株式市場より安全とみなされる海外不動産や金融資産への投資に向かい、個人投資家の株式やETFへの直接投資は慎重な姿勢を維持している。
一方で富裕層を中心とした慎重なポジション構築は、株式市場の過熱感やパニックの兆しを抑え、比較的安定した上昇を支えている。
課題は多いが、企業努力・政治交渉が中期的市場の安定の要因に
市場のボラティリティも比較的落ち着いている。CSI300指数の10日間ヒストリカル・ボラティリティは、昨年10月の急騰局面と比べて大幅に低く、今年の最安水準と比べてもわずかに高い程度にとどまっている。また、株式連動型ETFからは8週連続で資金が流出している一方、CSI300指数は同期間に9%超上昇。債券型ETFやマネーマーケットファンド(MMF)への資金流入も続いており、市場には依然として潜在的な資金余力が残されていることが示唆される。
原田氏は次のように指摘する。
「中国株式市場の堅調な推移だけで安心することはできません。地下銀行を介した海外資金流出は公的統計に反映されにくく、政府も抑制を意図して規制を強化しています。しかし、富裕層の資産保全ニーズに応じた非公式ルートの存在は、依然として中国経済の構造的課題として残ります。それでも、企業業績の改善や中国企業の海外進出、米国との関税交渉の成果などは、中長期的に市場を支える要因となると考えられます」
個人投資家が慎重姿勢を維持する一方で、富裕層や機関投資家による安定的な資金運用が、市場の落ち着いた上昇を支えていることを示している。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
