(※写真はイメージです/PIXTA)

2026年の首都圏中学受験から約1カ月がたった。はたして2026年の中学受験はどうだったのだろうか。取材をすると合否だけでは測れないドラマが、各家庭で繰り広げられていたようだ。志望校の見直しや併願校の選定、親子のやり取り――受験生と家庭は、この数日間を通してどのように成長し、何を掴んだのか。ある家庭のケースから、2026年の受験の実像を追った。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

2026年の首都圏中学受験

東京・神奈川の私立中学入試は、例年通り2月1日を皮切りに数日間にわたって行われる。数年間にわたる受験勉強の集大成となるこの数日間は、多くの家庭にとって大きな節目だ。

 

今年の受験を振り返ると、いくつか特徴的な動きも見られた。受験者数は依然として高い水準を維持する一方、志願者の分散が進み、中堅校への人気が高まる傾向が指摘されている。大学附属校人気の継続や共学校志向の高まり、探究型学習など教育内容を重視する志望校選びも広がっているようだ。

 

また、2026年は2月1日が日曜日に重なる「サンデーショック」の年でもあり、女子校の一部では試験日程の変更があった。併願パターンにも例年とは異なる動きが見られたという。

 

こうした状況のなか、多くの受験生が経験するのが、2月1日から数日間にわたる“連戦”だ。

 

受験を終えた家庭の多くが、同じ言葉を口にする。

 

「2月1日はゴールではなかった」

 

むしろ、その日から始まる数日間こそが本当の勝負だったという。

「合格したのは、1月に決めた学校だけだった」

複数の中学受験家庭に取材すると、合否や進学先は違っていても、受験を振り返ったときに語られる思いには共通点が多いことがわかった。第一志望校に届いた家庭もあれば、受験の途中で志望校を見直した家庭もあった。

 

首都圏に住むある家庭も、今年の受験を振り返りながらこう語る。

 

Aさんの息子が中学受験を意識して塾に通い始めたのは、小学1年生のときだった。最初は町の小さな塾に通い、基礎学力を身につけるところからスタートした。

 

小学3年生になると、中学受験を本格的に視野に入れ、大手進学塾に入塾した。しかし、そこで思わぬ壁にぶつかるという。

 

「授業のスピードがとても速く、息子がついていけていないと感じました。もともと落ち着いて座っているのが少し苦手なタイプで、授業を聞くだけで精一杯の様子でした。『これでは通っている意味がないのではないか』と思ったんです」

 

家庭での復習にも時間がかかり、学習のリズムは次第に崩れていった。そこで家族は思い切って塾を変える決断をする。大手塾から、少人数制の塾への転塾だ。

 

少人数の塾では、授業は理解を確認しながら進み、先生の目も一人ひとりに行き届く。息子にとってはその環境が合っていたのか、徐々に学習のペースは安定していった。

 

小学4年生以降は、偏差値60前後の学校を志望校として設定。本人もその学校を目標に勉強を続けてきたが、受験が現実味を帯びてきた6年生の秋、状況は変わった。

 

模試の点数も、過去問を解いてみても思うように伸びなかった。合格最低点に届かないことも多く、志望校のハードルは想像以上に高いと感じるようになったのだ。

 

そこで家族で志望校を見直し、偏差値をおよそ5下げた学校を、新たな第一志望に据えた。

 

その学校はもともと第2志望として考えていた学校で、文化祭や学校説明会で何度も足を運んでおり、校風にも好印象を持っていた。

 

「ここなら楽しく通えそうだ」

 

親子ともに前向きな気持ちで志望校を定め直したが、受験勉強は最後まで順調ではなかった。

 

「志望校を変更しても、なかなか過去問の合格最低点に届きませんでした」

 

特に理科の得点が安定せず、合格ラインを越えられない状況が続いたという。そして、塾の特訓講座や空き時間の個別指導で教育費は急激に増加。

 

「正直、かなりの金額でした。でもそのときは『今やらなかったら後悔する』という気持ちが強くて、合格できるならお金なんて後でどうにでもなると思いました」

 

ただし、息子の生活は勉強一色ではなかったそうだ。

 

「受験期もYouTubeを見たり、ゲームをしたりして息抜きをしていました」

 

そして年が明けた1月、家庭ではもう一度受験校を見直すことになった。

 

「過去問の点数を見ると、このままでは受かるところがないのではないかと思いました。志望していた学校と学力水準がある程度近い学校を、受験予定表を見ながら必死に探したんです。この学校を見つけていなかったらどうなっていたのか……と思うと、今でもゾッとします」

 

そして迎えた2月1日。午前の第一志望校は不合格だった。結果的に、合格したのは、1月に急遽受験することを決めた学校だった。

 

「受験前に思い描いていた結果とは違いました」

 

それでもAさんはこう語る。

 

「実は、学校を見に行ったときから“いい学校だな”と思っていたんです。本人は不本意かもしれませんが、楽しく通ってくれたらいいなと思います。入学を前に、慣れない英語の勉強にも一生懸命取り組んでおり、新しい学校生活を楽しみにしている様子です」

鎧を脱いだ夜に掴んだ、本当の「合格」

東京都在住のBさん(40代)の息子は、偏差値60前後の難関校を第一志望に、数年間努力を重ねてきた。夜遅くまで過去問に取り組む息子を見守り、親もまた勉強の進捗や体調に気を配る日々が続いた。しかし、入試本番は非情だった。2月1日、4日と第一志望校に挑むも不合格。さらに併願校からも縁がなく、連敗の泥沼に陥った。

 

受験が進むにつれ、息子の肩には力が入り、顔には緊張と疲労が表れていた。Bさん自身も、心が折れそうになりながら、「まだ諦めてはいけない」と強くあろうとする。しかし、家の空気は重く、食卓の会話も減り、互いの緊張が増していった。

 

2月4日の夜、家族はついに向き合う時間を持った。テーブルを囲み、これまで押し殺していた思いを口にする。

 

「こんなに頑張ったのに…どうしてうまくいかないんだろう」

「もう力が尽きたかもしれない」

「どうしてこんなに苦しいんだろう」

 

息子の目には涙があふれ、Bさんも思わず声を震わせた。

 

「ここまで諦めずにやってきたこと自体、すごいことだよ」

「あと一日だけ、一緒に力を尽くしてみよう」

 

涙と声を通して、家族の間にあった緊張や重さが少しずつほぐれていくのをBさんは感じた。長い受験生活で互いに抱えていた不安や焦りを、初めて素直に共有した夜だった。

 

「やれるだけやってみる。ダメでも、後悔はしない」

 

翌朝、家を出る息子の足取りには力強さが戻っていた。Bさんも、親としてできる限りのサポートを心に決め、試験会場へ向かった。

 

2月5日の受験では、神奈川の学校で息子は見事合格を勝ち取った。連敗の淵から、家族でつかみ取った逆転劇だった。帰宅後の家では、緊張が一気に解け、笑顔と歓声が溢れたという。

 

「あの夜に家族で本音を語り合わなかったら、この結果はなかったと思います。努力だけでなく、互いの気持ちを認め合うことが大切でした」

中学受験はありかなしか

今回の受験を通して、前出のAさんは中学受験の本当の意味を考えつづけてきたという。第一志望校合格だけが目的ではなく、子ども自身の成長や家庭での関わり方が問われることを実感したという。

 

「よく『地頭がないのに中学受験をさせるのはかわいそう』という声を聞きます。でも、うちの子のように勉強が安定しないタイプこそ、受験の勉強をする意味があると感じました」

 

算数や理科、社会の理解は深まり、勉強一色ではない生活の中で、YouTubeやゲームなど息抜きも交えながら、自分のペースで努力する力を養えた。

 

「合格することだけではなく、努力の過程を通して自分で考え、乗り越える経験こそが、子どもにとっての本当の財産だと思います」

 

中学受験は、親子で歩む数年間の物語。2月1日がゴールではない。そこから始まる数日間の挑戦が、子どもと家庭に大きな学びを残す。

 

 

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班

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