(※写真はイメージです/PIXTA)

102歳の祖母を中心に、相続人も70代という「超高齢相続」の相談がありました。財産は約2億円。すでに両親も多くの財産を持っており、次世代への承継をどう進めるかが大きな課題です。家族全員が話し合い、遺言書を作成するまでの流れについて、相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続 代表取締役)が解説します

公正証書遺言は170歳まで保管

公正証書遺言は、遺言者と証人、公証人が署名・押印して完成します。作成された原本は公証役場で保管され、その期間は「遺言者の死亡後50年」「証書作成から140年」または「遺言者の生誕から170年」のいずれかです。つまり、最長で遺言者が170歳に達するまで保管される仕組みです。安心して長生きできるよう配慮された制度といえるでしょう。さらに、公正証書遺言のデータは全国の公証役場で確認できるよう管理されています。

遺言書は家族全員の合意を

公正証書遺言は本人の意思を反映したものですので、自分の意思竹で作成することも可能です。けれども、今回の祖母の場合、孫やその配偶者とひ孫に遺贈する内容ですので、財産を受ける人の戸籍や住民票が必要になります。そのため、本人の意思だけでなく、財産を受ける人全員の合意のもとに作る必要があります。

 

今回は看奈さんのリードのもとに、相続人である両親や看奈さんの配偶者や妹とそれぞれの子どもたち全員に祖母の意向を伝えて、合意を得ています。こうすることで祖母への感謝も深まり、遺留分などの争いも起こらないと言えます。

 

公正証書遺言のメリット

安全性・確実性

公正証書遺言は、公証人が遺言を作成・保管するため、偽造や改ざんのリスクが低いと言えます。また、裁判所の検認が不要です。

意思の明確化

公証人が意思確認をしながら遺言を作成できるので、内容が明確で争いを避けやすいです。

法的効力の強さ

遺言書が法律の専門家である公証人により、法律に基づいて作成されるため、無効になるリスクがほとんどありません。

安心感

遺言者が認知症や体調不良であっても、適切な意思確認が行われるため、後々のトラブルを回避できます。 

孫やひ孫への遺贈のメリット

直接的な資産承継

孫やひ孫に直接遺贈することで、遺産を次世代に渡しやすくなります。特に、孫に特定の資産や支援をしたい場合に有効です。

相続税対策

孫やひ孫に遺贈すると、子の代を飛ばして財産を渡すことになり、場合によっては世代を超えた相続税の負担軽減が図れる可能性があります。

注意点

相続税の負担増加

孫やひ孫に遺贈する場合、孫は「直系卑属」に該当しますが、「孫への相続税」は2割加算されるルールがあります。これにより、相続税が高くなる可能性があります。孫の配偶者への遺贈も相続税は2割増になります。

生活状況・年齢を考慮

孫が未成年であったり、生活能力がない場合、財産管理が難しくなる可能性があります。このため、管理人を遺言執行者として指定することや信託を活用することが考えられます。

まとめ

看奈さんは、祖母が体調を崩して入院したこともあり、慌てて相談にこられました。幸い、祖母は回復され、意思確認もできる状況になりましたので、公正証書遺言ができあがったのでした。この間、3週間程度で、公証役場の最短のスケジュールで作成してもらうことができました。

 

これでいつ相続になっても安心だと看奈さんは安堵されていました。現金贈与なども実行して、相続税の負担を減らすこともしていくということで、家族の協力のもとにもう少し対策を進めていくと言っていました。なにより、102歳という高齢ながら祖母の公正証書遺言ができたことで、安心できたと看奈さんは話しています。

 

今までは、私のほうで公正証書遺言の証人を受けている方の最高齢が98歳の方でしたが、看奈さんの祖母の遺言書ができ、最高齢の更新となりました。

 

 

 

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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