(※写真はイメージです/PIXTA)

2万5000回以上も白内障手術を執刀してきた眼科医・高田眞智子氏は、自ら患者として手術を体験した際、専門家としての知識と当事者としてのリアルな感覚の間に隔たりがあったといいます。頭では理解していたはずの眩しさや痛み、そして手術中に見えた意外な光景など、そこには数々の発見がありました。高田氏の著書『眼科医の私が白内障手術を受けて分かったこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より、詳しくみていきましょう。

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患者としての気づき

手術室でベッドに横たわります。手術中はとにかく顕微鏡がすごくまぶしく感じました。「顕微鏡の光ってこんなにまぶしいの? こりゃまいったな。これからは私ももっと光量を下げて手術をしなきゃ」と思いました。

 

先生は速やかに私の顔に手術の掛け布をかけ、さらにテガダームというシールを貼って、シールをハサミで切って術野(手術時における術者の視界)を確保しました。私も2万5000回以上やってきた手術なので、今、何が起きているか手に取るようで、術者の気持ちもよく分かります。

 

まずは目の消毒。目の周りを念入りに消毒してもらいました。上を見たり、下を見たり、4方向を3周ぐらいして洗眼しました。

 

その後、まばたきができないようまぶたを広げておく開瞼器(かいけんき)を取り付けました。これでまともに顕微鏡の光が目に入るのですが、そのまぶしいことまぶしいこと。まともに見ていられないほどつらく感じました。

 

私が術者のときには、「目を動かさないでください。顕微鏡の光をしっかり見てください」と何度も言ったことがありますが、患者さんに申し訳なかったなと、そんなことをちょっと考えました。

 

つらいと思っているうちに「前房麻酔をしますね」と言われました。ということは知らないうちにすでに角膜切開が行われていたということになります。まったく痛くなかったので気づかなかったのです。

 

その後、水晶体の超音波吸引をするときや皮質処理というプロセスのときは、圧を感じてそれなりに痛みがありました。

 

「これも結構つらいものね。機械の設定をできるだけ弱くしなきゃ」と自己反省。力を入れては術者に迷惑がかかると思い、力を入れないでリラックスするよう一生懸命自己暗示をかけて力を抜こうとしましたが、気がつくと、頭からかかとまで全身に力が入り弓なりに反りがちになってしまいました。やはり患者の立場になるとどうしても力は入ってしまうものだということが体験してよく分かりました。

 

最後まで顕微鏡の光がつらく感じました。手術中、眼内レンズが入ったら光のぼやけ方が変わりましたが、すごくハッキリ見えるようになったわけではありません。これまた手術直後に、自分はよく「見えますか? 見えるでしょう?」と患者さんに聞いていたので、それはやめようと思いました。

 

手術が終わったと同時に先生のほうも「あ~緊張したぁ~」とおなかから振り絞ったような大きな声を発せられました。私には即答で快く手術を引き受けてくださったものの、先生には相当なストレスを与えてしまっていたことを申し訳なく、無事に手術をしていただいたことに深く感謝しながら手術室をあとにしました。

 

 

高田眞智子
医学博士・日本眼科専門医

 

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※本連載は、高田眞智子氏の著書『眼科医の私が白内障手術を受けて分かったこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・編集したものです。

眼科医の私が白内障手術を受けて分かったこと

眼科医の私が白内障手術を受けて分かったこと

高田 眞智子

幻冬舎メディアコンサルティング

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