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この30年で目覚ましく進化した白内障手術:歴史から現代まで
白内障は、古くから人々を悩ませてきた病気の一つです。原因である水晶体の濁りは、かつて「年齢のせい」と諦められていました。それでも、人々はなんとか視力を取り戻そうと、時代ごとにさまざまな工夫を重ねてきました。
ここでは白内障手術の歴史をひもときながら、技術がどのように進化し、患者さんの生活を変えてきたのかをご紹介します。歴史を知ることで、現代の最先端技術がいかに画期的で、安心して治療を受けられるものかを感じていただければ幸いです。
命がけの治療から、安全な日帰り手術へ
白内障手術の歴史は、紀元前800年の古代インドにまでさかのぼります。当時は「墜下法」と呼ばれる、針で濁った水晶体を目の奥に押し落とす方法が行われていました。しかし、視力を取り戻せるかは運次第で、非常に危険を伴うものでした。
その後、水晶体を取り出す「摘出法」が登場しますが、麻酔や無菌技術がない時代です。感染症のリスクが高く、命に関わる危険と隣り合わせでした。19世紀になって麻酔や無菌技術が発展すると、手術の安全性は飛躍的に向上します。それでも、眼球の後ろに注射を打つ「球後麻酔」で強い痛みを伴い、手術時間は30分以上かかりました。さらに、術後は10日間、砂枕で頭を固定して入院するという、過酷な療養生活が必要でした。
そんななか、約50年前に画期的な技術が誕生します。それが「超音波水晶体乳化吸引術」です。この技術革新によって、手術時間は短縮され、患者さんの体への負担も大きく軽減されました。
超音波水晶体乳化吸引術の誕生と技術革新
1960年代、アメリカの眼科医チャールズ・ケルマン博士は、歯科用ドリルにヒントを得て、「超音波水晶体乳化吸引術」を考案します。細い管を通して超音波で水晶体を砕きながら吸い取る方法です。これにより、水晶体を丸ごと取り出す必要がなくなり、大きな切開をせずに済むため、体への負担は劇的に減少しました。
1967年、ケルマン博士によって初めて手術が成功します。その後も技術は進化を続け、切開サイズは当初の6mmから現在では約2mmにまで縮小し、麻酔も注射ではなく点眼麻酔が主流となり、手術中の痛みもほとんど感じなくなりました。
私は研修医時代にこの手術を初めて見たとき、その精密さと美しさに衝撃を受けました。そして、この技を極めたい、その一心で眼科医になると決めました。現在では、コンピューター制御やレーザー技術も取り入れられ、さらに精密で安全な手術が可能になっています。
