(※写真はイメージです/PIXTA)

患者のライフプランに合わせて時期を決定することができる白内障手術。しかし、一部の症例においては早期の手術が推奨されることがあるようです。では、どのような場合に、なぜ早期の決断が求められるのでしょうか。本稿では、高田眞智子氏の著書『眼科医の私が白内障手術を受けて分かったこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より、白内障手術を受ける時期の目安について、詳しく解説します。

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白内障手術を受ける時期の目安は?

白内障手術のタイミングは、多くの人にとって悩ましい問題です。現在の白内障手術は、視力回復にとどまらず、屈折異常や老眼の治療も可能です。特に、多焦点眼内レンズを選択することで、メガネへの依存を減らし、より自由で快適な視覚生活が期待できます。しかし、「白内障は見えなくなってから手術をするもの」という古い考えが一部の地域や医療従事者の間に根強く残っているのも事実です。このような考え方では、目の機能が低下し、白内障手術の恩恵を最大限に享受する機会を逃してしまう可能性があります。

 

白内障手術は緊急性のある手術ではないため、ある程度は自身の都合やライフイベントに合わせて計画を立てることができます。ただし、放置することで白内障が進行し、ほかの眼疾患を悪化させるリスクがあることを忘れてはいけません。特に、視機能が落ちたまま放置すると「アイフレイル」(目の機能低下による生活の質の低下)に陥る可能性があります。アイフレイルが進行すると、日常生活に支障をきたし、社会活動の減少や心理的なストレスを引き起こし、それが心身全体の疾患に波及するリスクも高まります。

 

そのため、手術を受けるタイミングについては、主治医と十分に相談し、本当に受けたい治療内容を検討することが重要です。視機能の回復は、単に「見える」ことを取り戻すだけでなく、身体的・精神的な健康を維持し、豊かな生活を送るための鍵となります。

 

当院では、現状よりも快適な視界や生涯にわたる良好な視機能、QOL(Quality Of Life:生活の質)の向上が期待できる場合、価値を丁寧にお伝えし、適切なタイミングで手術をご提案しています。

特に早めの手術を推奨するケース

1.強度近視

強度近視の方は、白内障の進行が早いだけでなく、網膜剥離や緑内障、黄斑疾患などの合併症を発症しやすい傾向にあります。白内障が進行すると眼底検査が困難になり、これらの疾患の早期発見が遅れる可能性があります。これら眼疾患のリスク管理のためにも普通の方よりは早めの手術を推奨しています。

 

また、強度近視の方は、白内障がまだ軽度の段階でも手術によって近視の度数を大幅に軽減できるため、多くの方が視力の大幅な向上を実感し、生活の質が改善します。そのため、白内障の治療にとどまらず、視力の向上や眼底疾患の管理といったメリットも考慮し、手術のタイミングについて主治医とよく相談されることをおすすめします。

 

2.膨隆白内障

膨隆白内障は、水晶体が膨らみ、前房(角膜と虹彩の間の空間)が浅くなることで、緑内障を引き起こすリスクがあります。この状態では、眼圧が急激に上昇し、視神経がダメージを受ける急性緑内障発作が起きる可能性があるため、早期の手術が必要です。

 

ただし、私の例で分かるように手術を勧めるのは視力の良い方が多く、緑内障発作のリスク回避のために手術は必要ではありますが、視機能が良いだけに手術の理解を得るのがいちばん難しいケースでもあります。リスク回避のための必要手術ではありますが、術前より視機能が落ちることもあるからです。

 

また、膨隆白内障が進行すると、手術そのものが技術的に難しくなり、術後の合併症のリスクも高まります。手術時期を見極め、適切なタイミングで対応することで、安全で満足度の高い結果が得られます。

 

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※本連載は、高田眞智子氏の著書『眼科医の私が白内障手術を受けて分かったこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・編集したものです。

眼科医の私が白内障手術を受けて分かったこと

眼科医の私が白内障手術を受けて分かったこと

高田 眞智子

幻冬舎メディアコンサルティング

白内障は目の中でレンズの役割をしている水晶体が白く濁り、ものが見えにくくなる疾患です。加齢とともに発症リスクが高まるため誰もがかかる可能性がありますが、現在では濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズ(IOL)を…

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