その手があったか!相続対策の準備をしていた矢先に80代父が急死…〈相続税1,319万円〉をとりあえずゼロにできたワケ【相続の専門家が解説】

その手があったか!相続対策の準備をしていた矢先に80代父が急死…〈相続税1,319万円〉をとりあえずゼロにできたワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

相続では、わずかな判断の差や制度の選択が、税額に大きな影響を及ぼします。今回ご紹介するのは、相続対策を行わずに亡くなった父親の遺産1億5,000万円をめぐる事例です。築50年以上の自宅とアパートには借入もなく、一見シンプルに見える相続でしたが、税額は1,319万円。配偶者の特例をどう使うかで、659.5万円を払うか、相続税をゼロにできるかが変わってきます。節税の成否を分けるポイントを、相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続 代表取締役)が解説します。

節税のために知っておきたい重要ポイント

前提:「評価を下げる」+「納税を減らす」=節税のしくみ

1.評価を下げる

相続税を節税する方法の一つ目は、「財産評価を下げること」です。それは、”申告の評価を下げる”ことです。評価を下げれば相続税も下がります。

 

亡くなってからでも評価を下げることができる財産として、主なものは不動産です。
不動産でも特に、「土地」の評価の仕方は一つではなく、いくつかの方法があります。
 

また、「土地」そのものがどれ一つとして同じものはなく、個々に状態が違い、マイナス要因がいくつも見つけられることがあります。土地の現実の状況を評価に反映できれば、評価減を引き出すことができ、相続税も節税できます。

 

また、他の財産でも評価を下げる要因が見つかることもあります。そうした個別の状況を引き出し、確認することで、減額の要素を一つだけでなく、二つ、三つと積み重ねていくことで、”申告の評価を下げる”ことができ、合法的に相続税を安くできるのです。

2.納税を減らす

相続税を節税する方法の二つ目は、「納税を減らすこと」です。たとえば、配偶者の税額軽減の特例が最たるものですが、効果的に利用することで納税額を大幅に減らすことができます。また、農地の納税猶予も納税を減らす選択肢となります。

 

このように「評価を下げること」と「納税を減らすこと」の組み合わせで、相続税を安くするのです。

 

相続税の節税は、「遺産分割」、「評価・申告」、「納税」のタイミングで考え、選択していきますが、サポートをする専門家のノウハウや実務経験により導き出されるものだといえますし、合わせて相続人自らの理解や決断が不可欠です。

 

個々の事情を判断し、具体的なこととして、どこから節税をはじき出すかを見極める能力があれば、亡くなってからでも節税のチャンスを作り出すこともできます。

 

このように個々の事情により、いくつかの機会にまだまだ節税するチャンスが残されています。こうしたチャンスをどう生かすかで、相続税も大きく変わります。

二つ目の具体例(納税を減らす方法)

配偶者税額軽減の特例で変わる

配偶者税額軽減の特例を利用することで納税額を減らすことができます。配偶者には財産の半分、あるいは1億6,000万円までは無税とする特例があり、配偶者の取得割合を増やすことで納税額を減らせます。

配偶者には最大の節税

6種類の税額控除のうち、最も節税効果が大きいのは、配偶者税額控除です。これは「配偶者の税額軽減」と呼ばれていることからもわかるように、被相続人の配偶者の税負担を大幅に軽減します。

(1)控除額の算式

  • 配偶者が取得した財産の課税価格が法定相続分以下なら、取得額がいくら多くても相続税はかからない。
  • 法定相続分を超えていても、その額が1億6,000万円以下なら相続税はかからない。

(2)配偶者税額控除を受ける条件

  • 婚姻届が出ている法律上の配偶者であること。
  • 相続税の申告期限までに、相続人・包括受遺者間で遺産分割が確定していること。

申告期限までに分割ができない場合は軽減特例を受けられません。ただし、申告期限から3年以内に遺産分割が行われた場合には、この特例を受けられるようになります。

二次相続の納税まで比較

配偶者が相続した財産は次の相続でまた課税対象になります。一次相続で特例を使えば納税負担は減らせますが、二次相続では配偶者が亡くなったときに再び課税されます。相続人が1人減るため基礎控除が減り、納税額が増える可能性があります。

 

配偶者に独自の財産がある場合、一次相続で無税でも、二次相続では一次以上の税額になることもあります。そのため、一次・二次相続のトータルで比較し、納税額が少なくなる分け方を選択する必要があります。

 

場合によっては、一次相続で配偶者に財産を分けず、子どもたちで取得することもあります。いずれの場合も納税額を確認してから決めることが無難です。

 

一次相続で特例を最大限利用し、その後配偶者が評価減や贈与などで財産を減らすことで、二次相続でも節税が可能になります。どの方法が適切かは、配偶者の年齢や体調、相続人や財産の状況によって選びます。

 

結論 とりあえずの節税

今回は配偶者は1億6,000万円まで相続しても、税額軽減により、納税しなくていいという特例を適用することをお勧めしましたところ、拓実さんをはじめとして母親も妹たちにも理解が得られました。よって、とりあえずは父親の財産は母親がすべて相続することで相続の手続きを進めることになりました。

 

あわせて母親の二次相続対策が必要になりますので、土地活用のプランを提案していくようになります。

 

 

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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