(※写真はイメージです/PIXTA)

多くの企業がはまりやすい落とし穴の一つに、「新規事業開発=新商品の開発」があります。その誤解のまま、商品アイデアをいくら練り直し変えてみても既存の商品のバージョンアップにしかならず「新規事業」の開発にはつながらないのです。では、なにを検討すれば新規事業の開発につながるのでしょうか。本記事では、リクルートの事業開発部門所長として多様な新規事業開発に携わり、独立後もコンサルティングファームOmelette株式会社を創業し、多くの企業を支援している羽野仁彦氏による著書『9割の企業がはまってしまう 新規事業開発の落とし穴 』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、「課題」から考える新規事業開発について解説します。

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新規事業は、商品アイデアではなく「課題」からアプローチする

炊飯器を開発する家電メーカーを例としてみましょう。

 

製品の改良を重ねて、中釜の材質を改良し、鍋底のヒーターの配置を工夫して対流を起こしながら炊くようにし、一層おいしく炊けるようになったという新商品の開発は、商品のバージョンアップをする新商品開発であって、新規事業ではありません。この家電メーカーが、これまでとらえてきた「ごはんをおいしく炊きたい」という「課題」は変わっておらず、その「課題」に応える商品を工夫したということだからです。

 

たとえば「ごはんをおいしく炊きたい」という「課題」ではなく、「おいしいごはんを食べたい」という「課題」としてとらえたとします。「課題」を変えると、炊飯器という商品の工夫・改良ではなく、「ごはんの宅配サービス」や「おいしい冷凍ごはんの販売」のような事業にまで発想を広げることができます。「ごはん」という大きなテーマは同じでも「課題」の設定を変えれば、新規事業の可能性が見えてきます。

 

この考え方は、商品である「炊飯器」からアプローチせず、「ごはんをどうしたいか」という「課題」からアプローチすることで、新規事業開発が新商品・新サービス開発に置き換わってしまう「落とし穴」を避けることができます。

 

私が講師を務めた学生向けのアントレプレナーシップ講座で、参加者の学生の一人が出してくれた事業アイデアに「デリバリーたこ焼きセット事業」というのがありました。講座のカリキュラムのなかで、一つのアイデアとして出されたものであり、実際に事業化するというレベルではないのですが、私はセンスのいいアイデアだと感じました。

 

このアイデアを出した学生は、「おいしいたこ焼きを楽しみたいが、自分ではうまく焼けない」「たこ以外を入れてもおいしいといわれるが、なんの具がよいかまでは、よく分からない」「友達を呼んでパーティーをするときなどピザくらいしか取るものがない。たこ焼きパーティーにしたら楽しそうだが、機材や具材がない」といった、本人にとって身近な「課題」をとらえていました。

 

その学生は、この「課題」に対して「たこ焼き器、たこ焼きをつくるための材料一式、おいしい焼き方のマニュアルを、すべてセットにしてデリバリーする」という事業で応えようとしました。

 

「たこ焼きの宅配」「たこ焼き器のレンタル」といった従来サービスもありますが、この学生の事業アイデアは、たこ焼き器、材料、マニュアルをデリバリーすることで、「たこ焼きパーティー体験」という新たな価値の提供を実現するものです。

 

一方で市場としても、パーティー等で利用されるような宅配事業では、宅配ピザ等の市場を想定することができ、新たな需要の掘り起こしの必要性もないと思われます。さらに、〝粉もの〟ですから原価率は低く抑えやすく利益の出しやすい事業にすることができると考えられます。

 

身近な「課題」から発想された小さな事業ですが、友達とたこ焼きパーティーがしたいという課題に応える新規事業だと感じ、本格的に検討してもよいと私自身も興味を持ちました。

 

「ごはん事業」や「デリバリーたこ焼きセット事業」の事例は、世のなかの「課題」を見つけ出し、その「課題」をとらえた事業アイデアです。

 

ここで重要な点としては、その解決しようとする「課題」が一過性の「課題」や、一部の人に限られた「課題」ではなく、10年、20年後でも、変わらずに「課題」であり続けているようなものであるかどうかを見極めなければなりません。

 

「おいしいごはんが食べたい」「友達とたこ焼きパーティーがしたい」という「課題」は普遍性のある課題ですので、新規事業開発プロジェクトに向いている「課題」といえます。

 

一方で、対照的に次のような新規事業の企画がありました。「自社オフィスの近くにランチを食べる場所がなくて困っている人が多い。このオフィスワーカー向けにキッチンカー事業を展開する」というものです。

 

確かにこの事業アイデアは「ランチを食べる場所がない」という「課題」をとらえていますが、近くにレストランがオープンする、オフィス人口が減少するなどの環境が変化することで、とらえていた「課題」が変化してしまうことが想定されます。また、自社オフィス周辺という限られた市場が対象のため市場も小さい事業アイデアだといえます。

 

将来の自社の中核的な事業に発展し得る可能性もある新規事業開発では、事業構想・事業アイデアの段階で、世のなかにある「課題」をどのように設定するのかが重要であり、その「課題」を解決する事業の影響力や社会的な意義の大きさも確認すべきです。

 

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本連載は、2025年6月23日に刊行された羽野仁彦氏の著書『9割の企業がはまってしまう 新規事業開発の落とし穴 』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部抜粋・再編集したものです。

9割の企業がはまってしまう 新規事業開発の落とし穴

9割の企業がはまってしまう 新規事業開発の落とし穴

羽野 仁彦

幻冬舎メディアコンサルティング

新規事業開発の失敗には“型”がある! なぜ新規事業が頓挫してしまうのか? その“失敗の構造”を徹底解剖。 生成AIの登場に象徴される技術革新や不安定な世界情勢など、企業がおかれた経営環境は先行きを見通すことが…

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