ICT化への取り組み
ここまでは、一般企業にも関わりのあるDXについてお話してきましたでが、ここからは、ICT化についてお話します。
ICTとは情報技術(IT)を活用し、情報のやり取りを行う技術のことを指します。医療機関として特に関わりの深いICTツールとして、まず語られるべきは電子カルテの存在です。
電子カルテ、しかもクラウド型の電子カルテがあるからこそ、在宅医療が実現できている、ということを考えると、先述のとおり、在宅医療はデジタル時代の申し子だといえるでしょう。
遡ると、あい友会クリニックを創業した当初は「電子カルテは使わないで、紙カルテの方がいいんじゃない?」というアドバイスを受け、半年間ほど紙カルテで運用していました。当時、医師は私1人だったため、紙カルテでも運用ができていました。しかし、医師が2人、3人と増えていくと、不都合が出るようになりました…。
たとえば、3人で診療に回っている最中に「〇〇さんが具合悪いそうだから、近くにいる人が往診に行きましょう」ということになった場合、出先からその足で往診に行きたくても、紙カルテでは確認することができません。こういったときに、クラウド型の電子カルテであれば、手持ちのデバイスで即座にカルテを確認することができます。これらの事情から、開業半年で紙カルテからクラウド型の電子カルテへの移行を決めました。
院内スタッフ個人のデジタルリテラシーの向上が今後の課題に
電子カルテなどのデジタル技術は、技術が発表された初期の段階では、かなり価格が高くなってしまいますが、技術が広まるにつれ、どんどん安くなります。
開業後半年でクラウド型電子カルテを導入した際の利用料は、毎月10万円プラス使用の人数分のアカウント費用で、20万円以下程度でした(開業当時の価格)。開業前に地域の中核病院の院長をしていた頃に、オンプレミス型の電子カルテシステムを導入しようとした際は、4,000万円~5,000万円ほどの費用がかかったことを考えると、基本料金の安さにとても驚き、いい時代になったな、と思ったことを覚えています。
また、私のクリニックでは、約5年前からGoogleとMicrosoftの有料アカウントをスタッフ全員に付与し、自由に使えるようにしています。Googleはビデオ会議ツールのGoogle Meetやドキュメントなど、共有しやすく使いやすいサービスが多くあるところが魅力的な点です。
もう一つは、ストレージが多いという点です。私の組織では、法人全体で422TBまでであれば追加料金なく使えるプランに加入しています。なお、電子カルテもなどは別に保存しています。
職員を見回してみると、部署にもよりますが、大いに活用できている人は有料アカウントの恩恵を十二分に受けています。一方で、正直なところ職員の6~7割は、配信されるオンラインミーティングや資料を見る程度で、積極的に使っているという程ではありません。
私としては、今後はグループ全体の職員のデジタル意識を高めていき、全員がGoogleやMicrosoftの個人アカウントを活用しながら、このデジタル社会を自分で歩いて行けるようになってもらたい、という思いを抱いています。
そしてクリニック内外の情報のやり取りに関して必要不可欠なSNSとして、Chatwork(チャットワーク)というビジネスチャットツールを利用しています。チャットワークはクリニック内、法人グループ内のやり取りにとどまらず、連携している訪問看護ステーションや薬局とのやり取りでも使用しています。これなしでの連絡方法はもう考えられない、というほど活用しています。
