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輸入額3割減──中国リスク再燃
2024年の中国からのレアアース(希土類)輸入額は、前年から約3割減少し、5年ぶりの低水準となった。背景には、中国による輸出規制の強化や、高純度品など高付加価値素材の供給制約があり、日本の製造業、特に自動車業界に大きな影響を与えている。
レアアースは、EV(電気自動車)モーターやハイブリッド車(HV)に使われる磁石に不可欠なネオジムやジスプロシウムを含み、脱炭素社会を支える基幹素材である。しかし、世界のレアアース採掘・精製能力の8割以上を中国が占めており、日本を含む先進諸国は長年にわたり「中国依存」からの脱却を模索してきた。
楽天証券コモディティアナリストの吉田哲氏は次のように指摘する。
「レアアースはその名の通り『希少な鉱物資源』で、地球上に均等に分布しているわけではなく、特定の国や地域に偏在しています。特に中国、ブラジル、インド、ロシア、オーストラリア、ベトナムなどに集中しており、その多くが西側諸国とは異なる政治体制を有している点に注意が必要です」
“出し渋り”の時代へ──レアアースの武器化
この偏在性が、サプライチェーン全体に地政学的リスクをもたらしている。
「近年の国際的な分断や民主主義の後退が、レアアースのような戦略物資の“武器化”を加速させています。OPECプラスの減産政策と同様、供給をコントロールする“出し渋り”の懸念も強まっています」
と、吉田氏は警告する。日本のように中国やロシア、ブラジルといった国に依存せざるを得ない国々にとって、この状況は大きな課題となる。日本は中国依存からの脱却を目指し、オーストラリアやEU諸国との協定締結など多様化を図っているが、レアアース埋蔵量の観点では依然として非西側諸国への依存度が高い。
実際、2023年末以降、中国政府はレアアース関連技術の国外流出に対する規制を強化し、輸出許可の審査・管理も一段と厳格化している。これにより、高純度品や特殊合金などの供給が滞り、価格上昇を招いている。民間商社の試算によれば、2024年のネオジム輸入価格は前年比で約15%上昇した。
こうした価格高騰は、自動車産業のコスト構造に直接的な影響を及ぼしている。EV・HVともにレアアースへの依存度が高く、モーター1基あたり数千円から1万円規模で原材料コストが上昇。部品メーカーは価格転嫁や代替素材の選定を迫られている。
トランプ関税で貿易摩擦拡大?
一方で、米国の対中関税政策、いわゆる「トランプ関税」も状況を複雑化させている。アメリカのみならず日本を含む複数の国にも波及し、世界的に貿易摩擦が拡大している。たとえ表向きに合意が成立しても、関税率は依然として高く、自由貿易の阻害は解消されていない。
吉田氏は、
「この関税政策は自由貿易の原則に反し、中国製レアアース磁石に対しては第三国経由であっても課税対象とする姿勢を示しており、世界的な貿易摩擦を拡大させています」
と警鐘を鳴らす。
このような政治的意図を含む制裁措置はレアアースの「逆利用」とも言えるもので、国際貿易の分断を一層深刻化させている。
こうした情勢を受け、日本政府はレアアースの安定調達に向けた「戦略物資」の再定義を進めている。2025年度予算案には、希少金属確保に関する基金の拡充が盛り込まれ、経済産業省もオーストラリアやベトナムとの共同探査・精製プロジェクトへの投資を拡大している。
投資マネーの行方
投資市場でも、レアアースへの関心が高まっている。米国のETF「REMX(VanEck Rare Earth/Strategic Metals ETF)」には、レアアースの採掘・精錬・リサイクルに携わる企業が多数組み込まれている。
吉田氏は次のように語る。
「REMXは、需給動向や政治的リスクを間接的に価格に織り込む有効な投資ツールです。このETFは2024年末から2025年6月にかけて価格が上昇しており、中国の供給政策や世界的な脱炭素化の進展がその背景にあります」
2024年6月以降、REMXは明確な上昇トレンドを描いており、関税政策の再燃や中国の供給戦略の変更といった地政学的要因が、投資資金を呼び込んでいる。関税政策の再燃をきっかけとした、プラチナや銀、パラジウム、銅などの金属市場への資金流入、価格上昇とも連動している。特に、トランプ大統領による関税政策の影響により、中国製の金属製品・原材料に対する供給懸念が再燃し、代替調達や価格高騰への連想から、レアアース関連ETFへの資金流入が起きたと見られている。
長期視点での資源戦略
吉田氏は、
「レアアースには米国の先物市場のような大規模な公設の取引所がなく、国際価格の可視化が困難です。そのため、財務省の貿易統計や民間の推計値など、間接的なデータを活用して分析する必要があります。長期的には価格上昇傾向が続くと見ています」
と分析する。
短期的には、政策リスクによる混乱にも目を配るべきだという。
「実際、レアアース関連ETFやプラチナ、パラジウム、銀などの貴金属価格は短期的に上昇していますが、関税引き上げのリスクから反落する可能性もあります。このような値動きには慎重な対応が求められます」(吉田氏)
では、長期的にはどうだろうか。
「レアアースの需給構造は非常に厳しく、特に西側諸国の価値観と対立する非西側諸国が豊富な資源を保有しているため、供給の不安定さが今後も続くと見込まれます。こうした国々による“出し渋り”が市場の供給を逼迫させ、価格上昇圧力となるでしょう」(吉田氏)
つまり、短期的には関税政策などのリスクによる価格変動に注意が必要だが、長期的には違う部分に懸念が生じる。
「長期的には非西側諸国による供給管理と、西側の脱炭素需要の拡大により、レアアース価格は上昇基調が続く可能性が高い。持続可能な資源調達の重要性は今後さらに増していくでしょう」(吉田氏)
加えて、吉田氏はESG(環境・社会・ガバナンス)投資の影響にも言及した。
「ESG投資の流れがレアアース需要を後押しすると期待されていましたが、欧米の一部大手金融機関では『ESG』という用語の使用自体を見直す動きも出ています。これにより、ESG需要の伸びが当初想定より鈍化する可能性もあり、この点も注意が必要です」
経営層にとっては、こうしたマクロ・ミクロ両面の構造変化を正確に捉え、資源リスクへの対応を戦略的に見直すことが求められている。部材調達の多様化、再資源化技術への投資、情報収集体制の強化など、先手を打つ取り組みが、企業の競争力と持続的成長を大きく左右する局面に差し掛かっている。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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