国外財産調書制度とは
国外財産調書は、国内居住者が保有する海外資産の状況を税務当局に報告する制度である。制度は2014年に導入され、目的は海外資産の適正課税の確保である。
提出義務は、12月31日時点で国外財産合計が5,000万円を超える国内居住者に課され、個人のみならず法人オーナーや高額資産を保有する富裕層も対象となる。対象財産は、有価証券(株式・債券)、預貯金、土地、建物、貸付金など海外にあるすべての資産であり、評価額は日本円に換算して算出される。
提出期限は翌年6月30日までであり、期限を過ぎると加算税や罰則の対象となる。国外財産調書を提出していれば、所得税・相続税の申告漏れが発覚しても加算税が軽減される場合がある。
一方、調書未提出や記載漏れがある場合には加算税が重くなる。場合によっては刑事罰の対象となることもあり、国外資産を保有する者にとって正確な申告が不可欠である。
制度導入以降の推移
国外財産調書制度は2014年に導入されて以降、提出件数・総額ともに年々増加傾向を示している。制度開始当初は提出件数が数千件規模、国外財産総額も数兆円程度であったが、国内外の株式市場の上昇や円安傾向などを背景に、2024年には件数1万4,544件、総額8兆1,945億円と導入以来の過去最高を更新した。
この10年間での増加は、富裕層の海外資産保有が着実に拡大していることを示すとともに、国税庁による適正課税の監視が強化されている現状を裏付けるものである。海外資産の評価額は市場環境により大きく変動するため、毎年の調書提出が税務リスク管理の重要な手段となっている。
富裕層の資産構成と傾向
2024年分の提出内容を見ると、国外財産の大部分は有価証券が占めており、総額の約6割強にあたる5兆4,817億円が株式や債券である。預貯金は8,817億円、海外不動産や建物は5,397億円、貸付金は2,618億円、土地は1,686億円、その他の資産が約8,611億円を占める。
有価証券が圧倒的に多く、海外株式や外国債券への投資が富裕層の資産運用の中心であることが分かる。預貯金や不動産は補完的な資産として位置づけられ、資産運用戦略と課税リスク管理の両方に影響している。
海外資産評価額の増減要因
国外財産総額が過去最高となった背景には、株価の上昇や円安、海外不動産価格の変動がある。海外株式の評価額が上昇したことで富裕層のポートフォリオ全体の価値が押し上げられ、さらに外貨建て資産を日本円に換算した場合には円安の影響で評価額が膨らむ効果もあった。
加えて、海外の都市部不動産の価格上昇が、建物や土地、貸付金を含む資産全体の価値を増加させた。これらの要因が重なり、国外財産総額の過去最高更新につながったのである。
加算税の特例措置と申告の重要性
国外財産に関する所得税・相続税の申告漏れが発覚した場合、加算税が課される。しかし、調書の提出有無によって税額は変動する。2024年度(2024年7月~2025年6月)において、調書未提出で加算税が重くなった件数は366件、逆に調書提出により加算税が軽減された件数は221件である。
富裕層にとって、調書提出の有無は数千万円規模の税負担に直結する場合もある。正確な申告は不可欠である。
国際情報交換(CRS)との連携
国外財産調書制度と並行して、国際的な金融口座情報の交換も進められている。国税庁は2024年度に、101ヵ国・地域の税務当局から日本居住者の金融口座情報を274万5,374件入手した。これにより、国外財産調書の申告内容と国際的金融データの照合が可能となり、申告漏れの把握と課税の適正化がさらに強化されている。
2014年の制度導入以来、国外財産調書の提出件数・総額は年々増加傾向にあり、2024年には件数・総額とも過去最高を更新した。株高、円安、海外不動産価格の上昇が評価額増加の主な要因である。国外財産を保有する国内居住者、とくに富裕層は、提出期限内に正確な調書を作成することが不可欠であり、提出の有無は加算税の重さにも直結する。国外資産の透明性確保と税負担軽減のため、制度の重要性を改めて認識する必要がある。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
\2月7日(土)-8日(日)限定配信/
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