6割が長期就労希望も「日本離れ」の兆し…インドIT人材の対日観、期待と不安が交錯する最新調査のリアル

6割が長期就労希望も「日本離れ」の兆し…インドIT人材の対日観、期待と不安が交錯する最新調査のリアル
画像:PIXTA

日本の人材不足を補う切り札として、インドのIT人材に熱い視線が注がれています。最新の調査では、3年以上の長期就労を望む学生が6割を超えるなど、日本への関心は依然として高いことが示されました。しかしその一方で、希望者の割合は前回調査から減少しており、「日本離れ」の兆候も見て取れます。彼らはなぜ日本を目指し、そして何がその熱意を揺るがしているのでしょうか。期待と不安が交錯する、インド人学生のリアルな対日観を調査結果から読み解きます。

「日本で5年以上働きたい」は36%

Zenkenが2025年2月に実施したインド人学生のアンケート調査によると、「日本で3年以上働きたい」との回答が6割超に達した。日本企業の一部には「外国人が職場環境に合わずにすぐに辞めてしまう」とのイメージもあるが、インドのIT人材については就職した日本企業に一定期間働きたいとの要望がある。外国為替市場では歴史的な円安が続いているが、日本企業はインドのIT人材獲得のチャンスはなお十分あるといえそうだ。

 

調査はZenkenがインド・ベンガルールなどの15の工科系大学の学生を対象に2月4~10日に実施し、1671件の回答を得た。アンケートでインド人学生に対して「日本で何年働きたいか」と聞いたところ、「3年以上」と回答した人は65.3%と大半を占めた。「5年以上」と答えた人は36.8%だった。インド国内の給与水準が日本をなお大幅に下回っていることもあり、日本で就職して長期間働きたいと考えている人が多いことが浮き彫りになった(図表1)

 

【図表1】
【図表1】
 

一方で「日本で3年以上働きたい」と答えた人の比率は前回調査の75.2%に比べると10ポイント近く低下した。「5年以上働きたい」との回答は前回調査を16.7ポイントも下回った。バブル経済崩壊後、日本の労働者の賃金は長期にわたって低迷、1人当たりの所得は米国やドイツを大幅に下回っている。今後もこうした経済状況が続けば、日本で長期間働きたいインドのIT人材の比率はさらに下がる可能性がある。

「日本で就職して、その他の国にまた転職」は46%にとどまる

アンケートで「日本で就職しても、その他の国にまた転職したいか」と聞いたところ、「いいえ」と答えた人が53.8%と過半数に達した。「はい」は46.2%にとどまった。ただ、「いいえ」との答えは前回調査と比べると6.6ポイント低下した。この回答を見ても、1年前と比べてインド人IT人材が日本での長期間の就業にやや消極的になっている(図表2)

 

【図表2】
【図表2】

 

「(日本以外の)どの国・地域に転職したいか」と聞いたところ、「ドイツ・その他EU諸国」が最も多く、70.5%に達した(複数回答)。米国が2番目で68.7%、カナダが39.2%で3番目だった。もっともトランプ米政権による移民政策の厳格化など欧米諸国では外国人の就職が難しくなっており、実現性は高くない。このほか、韓国が18.3%、中国が5.9%で続いた(図表3)

※本連載は、ジャーナリスト・日高広太郎氏編集協力のもと作成しております。

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