株主優待に積極的な「小売業」「水産・農林業、食料品」
優待実施企業の業種別企業数は、下記図表1のグラフの通りです。実施企業数が最多の「小売業」では、271社が株主優待を実施しており、他の業種を大きく引き離しています。
上位5業種のうち「小売業」「水産・農林業、食料品」「卸売業」の3業種は、いずれも自社の製品・商品あるいは自社のサービスを株主優待品として活用しやすい企業が多い業種です。「自社および自社製品等の知名度向上」に、株主優待を有効に活用していると考えられます。
その一方で、第2位の「金属製品、機械、電気機器、輸送用機器、精密機器、その他製品」は、企業間取引を主体とする企業が大半を占め、自社製品やサービスを株主優待に活用しにくい業種です。そのため、プリペイドカードやギフトカタログといった優待内容が目立ちますが、本社や工場が所在する地元の特産品を進呈したり、株主向け工場見学会を実施したりと、様々な工夫を凝らしている企業がみられます。
【図表1 業種別株主優待実施企業社数】
業種別の株主優待実施率(業種別実施企業数÷業種別上場企業数、以下、業種別実施率といいます)をみてみると、「小売業」と「水産・農林業、食料品」の2業種が平均(全企業実施率 35.5%)を大きく上回っています。これら2つは、株主優待に対して最も積極的な業種といえるでしょう。
この1年間の変化で特に実施率が大きく上昇した業種は、「銀行業、その他金融業、証券・商品先物取引業、保険業」が+5.8%、「建設業」が+3.2%「電気・ガス業、サービス業」が+3.0%となっています。
【図表2 業種別 株主優待実施率】
優待内容の3割が飲食料品、買物券・プリペイドカード
株主優待の内容を11の区分に分類したものが下記の図表3のグラフです(1つの企業が複数の分類に属することもあります)。
分類別に比較すると、「飲食料品」と「買物券・プリペイドカード」の2分類が突出しています。
「買物券・プリペイドカード」では、クオ・カードやギフト券の様な金券を優待品にするケースや、スーパーマーケットやデパートなどの小売業が自社店舗で利用可能な買物券・割引券などを優待品とするケースなどがあります。新設企業の半数以上がクオ・カードを採用したことなどにより前年比で+83社となっています。
「飲食料品」では、お米やお米券、野菜、果物、肉、魚、ドリンク類など様々な飲食料品も優待品となっています。他には、毎年異なる特産品や名産品を優待品とする企業もあります。こちらは前年比で+32社となっています。
「その他」はここ数年増加している分類で、自社工場や施設の見学会、株主のみを対象としたイベントへの招待、地震などに備えた災害時の避難グッズの進呈などユニークな内容のものがあります。また、ユニセフやWHO(世界保健機関)などへの寄付を行う社会貢献型の優待制度もこの分類に含まれます。
「オリジナル・限定品」は、一般では入手できないものを株主のみに進呈するものです。株主限定のグッズなどコレクターにとっては興味深い内容のものもあります。このように、優待の内容は多様化し、選択肢のバリエーションも広がっています。
【図表3 優待内容の分類】