株主優待は、一定数以上の株式を保有している株主に対して、企業が商品やサービスなどを進呈する制度です。この制度は、配当とあわせて株主に対する企業の利益還元策と位置づけられますが、任意の制度のため、全ての企業が実施しているわけではありません。
多くの企業が株主優待を実施している目的としては、「自社製品・サービスの紹介」、「業務内容の理解及び知名度の向上」、「株式の長期保有の促進」などが考えられます。
ここでは、大和インベスター・リレーションズ(株)が、全上場企業に対して直接調査を行い、収集した株主優待実施企業の情報に基づき、株主優待制度の最近の傾向を解説させていただきます。
株主優待実施企業は1,300社を超える!
今回調査時(2016年9月末)の株主優待実施企業数は1,307社と、調査を開始した1993年(実施企業数:283社、実施率:10.9%)に比べ、4.5倍超に拡大しています。
また、前年との比較では、実施企業数が80社増加、実施率(上場企業に占める優待実施企業の比率)※は33.5%から35.5%と大幅に上昇し、過去最高となりました。
※2016年9月末現在。全上場企業3,686社(REITを含む。外国株式、ETF・新株予約権・TOKYOPROMarketは含まず。)
【図表1 株主優待実施企業数と実施率の推移】
株主優待を新設した企業は108社
2015年の調査以降、株主優待制度を新たに導入した企業(プレスリリースにより正式に開示したもの)は108社です。
この1年間の新設企業について業種別にみた特徴は、「電気・ガス業、サービス業」が目立つ(22社)ということです。また、「金属製品、機械、電気機器、輸送用機器、精密機器、その他製品」が15社と続き、「情報・通信」が13社、「小売業」と「不動産、陸運業、海運業、空運業、倉庫・運輸関連業、REIT」がそれぞれ12社となっています。
これらの新設企業を上場時期で分類してみると、2015年以降に上場した新規上場企業が30社あり、上場後間もない企業が積極的に導入しています。一方、1940年代に上場した企業2社、1960年代に上場した企業7社と、上場後長い年を経た企業でも新たに株主優待を導入していることがわかります。
【図表2 株主優待新設企業108社】
【図表3 新設企業108社の業種】
【図表4 優待新設企業108社の上場時期】
株主優待実施企業数は2011年から増加傾向
2007年以降の実施企業数の増減をみてみると、2008年秋のリーマンショックによる影響で株主優待実施企業数が2009年~2010年に一時的に純減となりましたが、2011年からは新設企業数の減少傾向に歯止めがかかり、再び増加ペースとなりました。
特に、この1年は新設企業が108社と過去最も多かった2007年の105社を超える高い水準となっています。廃止企業をみると2015年はここ数年で最も少なく11社となっていましたが、2016年は16社と増加に転じています。廃止要因をみてみると、「公平な利益還元のため」が例年に比べて多く、69%を占めています。次いで、「上場廃止のため」が19%、残りが「経営不振のため」という理由となっています。
【図表5 優待実施企業数の増減推移】
【図表6 株主優待廃止要因】