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「年金分割」と「財産分与」という厳しい現実
愕然とする亮介さんに、薫さんは弁護士に相談して用意したという資料を見せ、「年金分割」と「財産分与」を要求した。
1.年金分割
婚姻期間中の厚生年金記録(保険料納付記録)を、夫婦の合意または裁判所の決定に基づき分割する制度。亮介さんの場合、婚姻期間が長いため、厚生年金記録の最大2分の1が薫さんに分割されることになる。概算すると、それぞれの年金受給額は以下のようになる。
離婚しなかった場合
夫・亮介さん:約250万円/年
妻・薫さん:約79万円/年(国民年金のみ)
年金分割(合意分割)を行った場合
夫・亮介さん:約165万円/年
妻・薫さん:約165万円/年
亮介さんの年金収入は、年間約85万円も減少してしまう計算だ。
2.財産分与
婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産は、離婚時に貢献度に応じて分割される。専業主婦の貢献も認められるため、原則として2分の1となる。亮介さんの場合、以下の通り。
共有財産:貯蓄7,000万円-住宅ローン残債1,500万円=5,500万円
妻・薫さんへの分与額:5,500万円÷2= 2,750万円
プライドの高い亮介さんは、法廷で争うことを良しとせず、薫さんの要求をすべて受け入れた。
離婚後、夫婦それぞれを待っていた現実
離婚後、亮介さんの手元に残されたのは、年金収入約165万円(月額約13.7万円)、貯蓄2,750万円、そしてローンを完済した自宅だった。
一見、生活に困らないように思えるが、現実は厳しい。
高額な維持費
都内の大きな自宅は、固定資産税だけで年間40万円近くかかる。外壁の補修など、老朽化に伴う修繕費も捻出しなければならない。
下がらない生活レベル
現役時代の金銭感覚が抜けず、家事も不得手なため外食に頼りがちになり、生活費はかさむ一方だ。総務省の家計調査では65歳以上の単身世帯の消費支出は月14万円台だが、これはあくまで平均値。亮介さんの場合、年金だけでは赤字になるのは確実で、貯蓄を取り崩す生活が続くことになる。
失われた夢
娘夫婦と同居し、クリニック兼二世帯住宅を建てる計画も、障害のある孫に資産を残してあげたいという願いも、すべて白紙に戻った。
一方、財産の半分を得た薫さんの生活もまた、決して安泰ではなかった。年金収入約165万円と貯蓄2,750万円を手にアパートで一人暮らしを始めたが、長年のブランクがある高齢女性の再就職は困難を極める。分与された財産は、自分と同じく苦労をかけた娘と、障害を持つ孫のために遺したいと、手を付けずにいる。
離婚という選択は、裕福だったはずの夫婦双方のライフプランを大きく狂わせた。もし離婚しなければ、世帯で約330万円の年金と7,000万円の貯蓄を元手に、豊かな老後を送れたかもしれない。亮介さんの悲劇は、変化する時代の価値観を理解せず、夫婦間の対話を怠った結果ともいえる。互いの人生を尊重し、未来を共に描く努力を怠れば、誰の身にも起こりうる、現代日本のリアルな姿なのである。
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