(※写真はイメージです/PIXTA)

金と並ぶ「現物資産」として、いま脚光を浴びている「プラチナ」。国内外の富裕層のなかには、金に次ぐ資産防衛ツールとして、プラチナを組み込む動きも広がる。今後、プラチナという選択肢をどう位置づけるべきか。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

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資産防衛の選択肢としての「プラチナ」

金と並ぶ「現物資産」として、いまプラチナが脚光を浴びている。2025年6月時点で、プラチナ価格は前年比で約25%の上昇を記録。需給の引き締まり、ロシア情勢による供給不安、そして「ハイブリッド車」や「水素関連技術」などの産業需要の復活が背景にある。

 

国内外の富裕層の間では、金に次ぐ資産防衛ツールとして、プラチナを組み込む動きも広がっている。変化する市場環境のなかで、プラチナという選択肢をどう位置づけるべきなのか。

実物資産としての再評価

世界経済の不確実性を増すなか、「プラチナ」の存在感が増している。ロンドン貴金属市場によれば、2025年6月時点のプラチナ価格は前年同月比で約25%上昇。高騰する金と並ぶ実物資産として再び注目されている。

 

プラチナ価格上昇の背景について、楽天証券経済研究所コモディティアナリストの吉田哲氏は、需給バランスの逼迫と地政学リスクを挙げる。

 

「まず、WPIC(ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル)やジョンソン・マッセイといった統計機関のレポートで、今後の供給不足が示唆されたことが、市場の期待感を高めました。加えて、ロシア・ウクライナ情勢の長期化により、主要産出国であるロシアからの供給が低水準にとどまっており、地政学的リスクが価格の反発を促しています」

「希少性の高さ」と「産業用途の広さ」が特徴

プラチナは、その希少性の高さも特徴だ。WPICのデータによれば、2024年の世界のプラチナ採掘量は約180トン。一方、金は約3,500トンと、実に20倍近い開きがある。

 

また、プラチナは自動車の排ガス浄化装置や水素関連技術など、工業用途が多岐にわたるため、需給ギャップが生じやすい金属でもある。

 

吉田氏は、金との根本的な違いについてこう解説する。

 

「金は歴史的に通貨的な役割を担ってきた一方で、プラチナは産業的な価値が中心です。プラチナは触媒作用を持ち、自動車の排ガスを有害度の低い物質に変換する用途などで、実用的な重要性があります」

 

かつては、2015年のフォルクスワーゲンによる「ディーゼルゲート」事件を契機に、プラチナ需要の減少が懸念されたが、統計上、大規模な減少は起きなかった。その上で、新興国での排ガス浄化装置向け需要が増加し、コロナ禍からの需要回復も相まって、現在はほぼ元の水準に戻っている。

 

「いま注目されているのが『ハイブリッドシフト』です。電気自動車一辺倒ではなく、内燃機関と電池を併用するハイブリッド車(HV)への回帰が進んでおり、プラチナの新たな需要源として期待されています。さらに、水素を使う燃料電池車(FCV)にもプラチナが用いられるケースがあります」(吉田氏)

 

ハイブリッドシフトとは、従来のガソリンエンジン車から、電気モーターとガソリンエンジンの両方を使う「ハイブリッド車(HV)」への移行・転換の動きのことだ。

複数要素が重なり、中長期的な価格上昇の土台が整いつつある

投資家の動きを見ても、プラチナに対する評価は変わりつつある。2025年初頭から、国内外のプライベートバンクでは、富裕層向けの資産防衛策として「金」だけでなく「プラチナETF」や「地金」なども提案の対象になっている。特にアジア地域の超富裕層においては、為替ヘッジ手段としてプラチナを活用する動きも見られる。

 

「プラチナは供給逼迫、地政学リスク、産業需要の復活、新たな需要の芽、そして投資対象としての魅力といった複数の要素が重なり、中長期的な価格上昇の土台が整いつつあります。今後も反発しやすい環境にあると見ています」(吉田氏)

積立投資ではむしろ優位か

プラチナを資産防衛の手段として活用するには、短期の価格変動に一喜一憂せず、ポートフォリオの一部として組み込むスタンスが求められる。

 

たとえば、「総資産の3〜5%を金とプラチナの合計で保有し、そのうち1〜2%をプラチナに充てる」といった配分が考えられる。また、国内での保有方法としては、地金やコインの直接購入に加え、プラチナETFや積立投資も選択肢となる。

 

「金はすでに高値圏で安定していますが、プラチナは価格が相対的に安く、反発余地があるという意味で、積立投資ではむしろ優位な面があります。月1万円の積立なら、金では1g未満ですが、プラチナなら2g前後を購入できるため、保有数量を増やしやすいのも利点です」(吉田氏)

世界景気の影響に要注意も、市場変動を乗り越え成長の可能性

日本銀行の統計によると、2025年4月時点で個人金融資産に占める「現金・預金」の割合は依然として51.3%と高水準だ。こうしたなか、実物資産の比率を全体の1〜2割にまで高める戦略は、インフレや為替リスクへの耐性を強化するうえで有効といえる。そういった状況で金だけでなくプラチナを組み込む意義は大きいといえるだろう。

 

ただし、プラチナは産業用途が多いため、世界景気に敏感である点には留意すべきだ。景気後退期には自動車販売が減少し、プラチナ需要が落ち込む可能性もある。

 

「プラチナは産業用途、特に自動車の排ガス浄化装置に多く使われるため、世界景気に敏感です。景気後退局面では自動車販売が減少し、需要が落ち込む可能性があります。このような短期的ショックには注意が必要です。とはいえ、S&P500などの株価指数が長期的に成長してきたように、プラチナも需給や市場の変動を乗り越えて成長していく可能性があります。需給データや地政学的要因を丁寧に確認しながら、長期的視点での積立投資を継続することが重要です」(吉田氏)

 

資産を守る視点からは、流動性・分散性・成長性の3要素をどうバランスよく設計するかが問われる。プラチナは、こうした資産設計において「次の柱」となり得る存在であるのかもしれない。

 

 

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班

 

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