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契約書のない「社長の貸付金」をめぐる税務署との争い
被相続人であるAさんは、自身が経営する同族会社B社に対し、長年にわたり定期的に金銭を支出していました。B社は資金繰りが厳しい時期も多く、Aさんが支援する形で、預金口座から数百万円単位の送金を繰り返していたのです。しかし、この送金については、金銭消費貸借契約書や返済スケジュールといった裏付け資料が存在しませんでした。
Aさんの死後、相続税の申告にあたり、相続人は当初この送金分を「貸付金」として申告し課税対象としましたが、後に「相続財産には該当しない」として更正の請求を行いました。
これに対し課税庁は、B社の帳簿上この送金分が「借入金」と記載されていたこと、Aさんに対する返済や利息の支払いが確認されることなどを根拠に、「実質的に貸付金に該当する」と判断し、相続人の請求を却下。「貸付金」として相続税の課税対象としました。これに対し、相続人は不服として国税不服審判所に審査請求を行いました。
1.AさんからB社への支出が相続財産となる「貸付金」に該当するかどうか
2.本件では、契約書などの形式的な証拠が乏しい場合であっても、経済的な実態に即して課税対象となるかどうか
