(※写真はイメージです/PIXTA)

被相続人が経営する同族会社に長年にわたり多額の資金を拠出していたにもかかわらず、契約書や返済スケジュールなどの形式的な証拠は一切なし。こうした状況で相続税申告後に「これは貸付ではなく出資だった」と主張した相続人に対し、税務署から「貸付金なので相続財産だ」と指摘されるケースが後を絶ちません。その判断の分かれ目についてみていきましょう。実際の裁決事例から、資金移動に潜む相続税のリスクを解説します。

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契約書のない「社長の貸付金」をめぐる税務署との争い

被相続人であるAさんは、自身が経営する同族会社B社に対し、長年にわたり定期的に金銭を支出していました。B社は資金繰りが厳しい時期も多く、Aさんが支援する形で、預金口座から数百万円単位の送金を繰り返していたのです。しかし、この送金については、金銭消費貸借契約書や返済スケジュールといった裏付け資料が存在しませんでした。


Aさんの死後、相続税の申告にあたり、相続人は当初この送金分を「貸付金」として申告し課税対象としましたが、後に「相続財産には該当しない」として更正の請求を行いました。
 

これに対し課税庁は、B社の帳簿上この送金分が「借入金」と記載されていたこと、Aさんに対する返済や利息の支払いが確認されることなどを根拠に、「実質的に貸付金に該当する」と判断し、相続人の請求を却下。「貸付金」として相続税の課税対象としました。これに対し、相続人は不服として国税不服審判所に審査請求を行いました。

 

【争点】

1.AさんからB社への支出が相続財産となる「貸付金」に該当するかどうか

2.本件では、契約書などの形式的な証拠が乏しい場合であっても、経済的な実態に即して課税対象となるかどうか

 

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