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「専門家任せ」に潜む本当のリスク
翌日、彼は血相を変えて顧問税理士の事務所に駆け込みました。お尋ねの書面をテーブルに置き、興奮気味に説明する彼に対し、長年の付き合いである税理士は冷静でした。
「社長、落ち着いてください。確定申告の際にお預かりした資料を拝見しましたが、寄付金控除に必要な証明書は確かにありました。しかし、これほど多岐にわたる返礼品を受け取られていたというお話は、今日初めて伺いましたよ」
税理士の言葉に、彼はハッとしました。ふるさと納税を、あくまで「プライベートな楽しみ」「少しお得な買い物」と捉えていた彼は、事業の帳簿や正式な資産とは関係ないと考え、その詳細を税理士に報告するという発想自体がなかったのです。
「いや、それは……。先生にお渡しするような事業の経費や資産ではないと、勝手に……」
力なく答える彼に、税理士は諭すように続けます。
「社長のお気持ちはわかります。ですが我々専門家も、いただいた情報がすべてです。ご自身の資産やお金の動きに関わることは、それがプライベートなものであっても、税金に関わる可能性があればすべてお話ししていただかないと、正しい判断はできません。特に近年のふるさと納税は、税務署が注目しているポイントの一つでしたから……」
「専門家に任せていれば安心だ」という彼の考えは、根底から覆されました。専門家は万能ではなく、正しい情報を共有して初めてその能力を発揮できるパートナーです。その当然の事実を、彼は見過ごしていました。税理士のサポートのもと修正申告を行い、追徴課税を納めた「勉強代」は、彼の心に重くのしかかったのです。
この一件は、彼に大きな気づきを与えてくれました。魅力的な節税や資産運用の話は、私たちの周りに溢れています。しかし、本当の意味での資産を防り、心からの豊かさを享受するためには、そのメリットの裏側にあるルールを正しく理解し、信頼できる専門家と正確な情報を共有しながら実践しなければならないのです。
