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税務署からの突然の通知…落とし穴への転落
ある日の午後、会社のデスクで郵便物に目を通していた彼の手が止まります。見慣れない税務署の印が押された一通の封筒。一抹の不安を覚えながら封を切ると、そこには「所得税及び復興特別所得税についてのお尋ね」という、冷たい活字が並んでいました。
(一体なんだ……? 税金の申告漏れなど、あるはずがない。確定申告はすべて先生に任せているんだぞ)
しかし、文面を読み進めるにつれ、顔から余裕が消えていきます。書面には、彼が行ったふるさと納税の寄付履歴が正確に記されていたのです。そして、問題の核心は次の文章に集約されていました。
「貴殿が受け取られた返礼品について、その経済的利益の年間合計額が、所得税法に定める一時所得の特別控除額を超えている可能性が認められます。つきましては、当該所得の申告内容について確認したく、ご回答をお願いいたします」
全身の血の気が引くのを感じました。税務署はすべてを把握していたのです。彼は慌てて過去の記録を引っ張りだし、受け取った返礼品の価値を頭の中で積み上げました。
高級腕時計型デバイス、有名ブランドのキャンプ用品、最新のデジタルカメラ、そして年間を通じて何度も届いた高級和牛や海産物の詰め合わせ……。それらの経済的利益の合計は、どう考えても特別控除の枠を大幅に超えており、申告漏れはもはや疑いようのない事実。
その夜、重い口を開いて妻に事情を打ち明けました。
「すまない……。ふるさと納税の件で、税務署から連絡が来てしまった。どうやら、やりすぎてしまったようだ」
いつもは彼の「お得術」を褒めていた妻は、静かに、しかし厳しい眼差しで彼を見つめました。
「少し夢中になりすぎじゃないかと、心配していました。どんなに得をしたように見えても、ルールを外れてしまっては意味がないでしょう?」
返す言葉もありません。家族を喜ばせたい、賢くありたいというプライドが、結果として最も基本的なルールを踏み外させ、家族に要らぬ心配をかけてしまったようです。
