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5,000万円だった実家が8,000万円に値上がり
「8,000万円……だって? 25年も経ったのに価値が上がるなんて」
都内とはいえ下町と呼ばれる一角で、佐藤誠一さん(仮名/65歳)は不動産会社からの査定書を手に、目を疑いました。
「なにかあったの?」台所から顔を覗かせた妻の裕子さん(仮名/63歳)に、誠一さんは言葉少なに書類を差し出します。
「うちのマンションの価値が、購入時の5,000万円から8,000万円に上がったんだ」
2000年、当時40歳だった誠一さんが懸命に貯めたお金で購入したマンション。中堅IT企業のボーナスも投じてローンを完済した我が家です。交通の便と温かい近所付き合いに恵まれ、家族は充実した日々を送ってきました。
ところが2025年春、不動産市場の活況と地域の再開発計画の影響で、物件の価値が大幅に上昇。近隣の新築タワーマンションの分譲価格高騰により、彼らの住まいも「市場評価8,000万円相当」と査定されたのです。
「まるで宝くじに当たったような話だけど……」裕子さんは首を傾げます「なんだか身の丈に合わない金額で頭が混乱してきたわ。私たちには使いこなせない大きな贈り物ね」。
夫婦はともに定年を迎え、現在の収入状況は誠一さんの年金(月17万円)と裕子さんのパート(月8万円)を合わせて月25万円ほど。2,000万円の預貯金と合わせ、質素ながらも安定した老後生活を送るには十分だと思っていました。しかし、帳簿上は「資産1億円の富裕層」に仲間入りしたことで、新たな悩みが生まれたのです。
同居中・無職の38歳長女に実家を…
「お父さん、なんだか考え込んでるみたいだけど大丈夫?」
長女の美咲さん(仮名/38歳)は、夕食の準備を始めながら、気遣わしげに父の肩に手を置きました。美咲さんは大学卒業後、葬儀社で10年ほど働いたあと、両親の高齢化を機に退職。以来、実家で両親と同居し、家事全般を担ってきました。
「うん……ただね、このマンションをどうするか考えてたんだ。将来、お前に住み続けてもらうかどうか」誠一さんは静かに答えます。
美咲さんは手を止めました「え、私に? でも兄さんは……」。
「お前がずっと面倒を見てくれているからね。健太(仮名)も自分の生活があるし、このマンションは将来的にお前に相続させようと考えているんだ」その晩、誠一さんは長男の健太に電話をかけました。
