アイデアソンが抱える「課題」とは?

今回は、アイデアソンが抱える「課題」とは何かを見ていきます。※本連載は、コミュニティデザイナーとして活躍する須藤順氏と、エイチタス株式会社の代表取締役である原亮氏の共著、『アイデアソン!アイデアを実現する最強の方法』(徳間書店)の中から一部を抜粋し、アイデアソンの概要と、アイデアソンを実際に取り入れたことで、企業にどのような好影響が表れたのかを紹介します。

本当に「効率的なアイデア創出方法」なのか?

アイデアソンには、さまざまな効果が期待できるが、一方でいくつかの課題も指摘され始めている。ここでは、現在指摘されている問題点を検証することで、解決の道を探っていきたい。

 

①価値創造へ本当に結実しているのか

 

「本当に価値創造に結実しているのか」という指摘は、アイデアソンの抱える最大の課題である。時間的制約の中で、本当に事業化までを見据えたサービスの開発は難しく、これまでも開催されてきたワークショップや開発イベントと同様、その場限りの取り組みとなっているのではないかとの声も多い。

 

また、そもそもブレインストーミングは、必ずしもアイデア創出に効率的ではないという研究結果もある。

 

これまでのイベントに比べて短期間でプロトタイプが「見える化」はできているものの、アイデアやサービスのほとんどが、どこかですでに公開されているサービスの焼き直しであったり、他のアイデアソンで生み出された成果と似ているという声も聞かれる。

 

さらには、現実の社会的課題の解決にはつながっていないという批判や、市場性のあるサービスを生み出すまでには至っていないという指摘もある。

 

②多様性は本当に確保されているのか

 

参加者の同質化という問題もある。よく指摘されるのは、デザイナーやエンジニアの不足である。また多数のアイデアソンが開催される中でにわかに指摘されているのが、「いつも同じメンバーが参加している」というものだ。

 

どこに行っても同じようなメンバーが参加し、結果として、アイデアソンの特徴であった多様性や異分野の交流という機能が弱まっている状況も見受けられる。実際、渡り鳥のようにさまざまなアイデアソンに出て、新規性のあるアイデアというよりは自分のすでに持っていたアイデアを披露する場として活用する参加者もいる。

 

アイデアソン自体がまだまだ特定の関心を持つ層にしか理解されていないこと、これまでのワークショップと何が違うのかを明確に説明することが難しいといったこともその要因として考えられるため、アイデアソンの魅力をいかに伝えていくかは大きな課題である。

参加者自身が、価値創造の成果を自覚できないことも

③アイデアソン疲れの危惧

 

現在危惧されるのが、「アイデアソン疲れ」である。アイデアソンは各地で毎週のように開催され、飽和気味の感も否めない。なかには、これまで数多く開催されてきたワークショップの看板を架け替えただけといったものや、ただのブレインストーミングを行うだけといったケースもある。

 

参加者自身が、具体的な価値創造の成果を自覚できなければ、アイデアソンに継続的に参加することに疲れてしまい、一瞬のブームで終わってしまう。

 

アイデアソンを、価値創造の場であると同時に、新たなつながりの形成やコミュニティへの参加の機会としても機能させることで、参加者のモチベーションの維持は可能だと思われる。

 

アイデアソンへの参加というインセンティブから、共にアイデア創造をする仲間との共創を楽しみたいというインセンティブへ移行させていけるかどうかがポイントになる。

 

④知財の取り扱い

 

アイデアソンの課題として、知財の問題を扱わないわけにはいかない。アイデアソンは、自由でオープンな場を通じて集合知を具現化する点に特徴がある。

 

しかし、裏を返せばそれは、そこで生み出されたアイデアは誰のものなのか、という問題を生み出す。特に企業や大学などの技術や研究成果、知財を活用する場合などはこの問題は避けて通れない。

 

この点について、IAMAS(情報科学芸術大学院大学)の小林茂教授らが、弁護士の監修のもと、参加同意書のフォーマットとして makeathon_agreement、co-creation_project_agreement 等を作成・発表し、対応を始めている。

 

いずれにしても、参加者に対して申し込み時点、または当日にアイデアのどの範囲までを自由に扱っていいのかについて同意書を取っておくことや、事前のアナウンスで一定のルールを共有しておくことが望ましい。

 

この話は次回に続く。

高知大学地域協働学部 専任講師
博士(経営経済学)
社会福祉士 

専門は、社会的企業論/社会起業家論、コミュニティデザイン論。医療ソーシャルワーカー従事後、医療関連施設の立ち上げ、福祉施設の経営コンサルティングに参画。その後、中間支援機関においてコミュニティビジネス/ソーシャルビジネスのコンサルティング、コミュニティデザイン支援、農商工連携/6次産業化等の支援を担当。(独)中小企業基盤整備機構リサーチャー等を経て、現職。ビジネス・ブレークスルー大学非常勤講師、(独)中小企業基盤整備機構TIP*S人材支援アドバイザー等。アイデアソンファシリテーターのほか、ローカルイノベーション創出、起業家育成、地域づくり、コ・クリエーション創出に向けた実践とサポート、研究を全国各地で展開。

著者紹介

エイチタス株式会社 代表取締役

1974年生まれ。法政大学法学部政治学科卒。編集者・ライターを経てモバイル業界に転身。営業、ディレクター、取締役等を歴任したのち、2009年、地元行政、企業と「みやぎモバイルビジネス研究会」を立ち上げ。ITベンチャーでの経験を活かしながら、地域で自走する人や組織、社会を作るための活動を展開。2014年「GlobalLabSENDAI」代表幹事。2016年エイチタス株式会社を設立。企業、自治体などあらゆる組織、テーマでの価値の探索のサポートを展開している。

著者紹介

連載アイデアを実現する最強の方法「アイデアソン」の基礎知識

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俣野 成敏

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