アイデアソンで「参加者のモチベーション」を保つ方法

前回に引き続き、アイデアソンを成功させるための運営ポイントを見ていきます。※本連載は、コミュニティデザイナーとして活躍する須藤順氏と、エイチタス株式会社の代表取締役である原亮氏の共著、『アイデアソン!アイデアを実現する最強の方法』(徳間書店)の中から一部を抜粋し、アイデアソンの概要と、アイデアソンを実際に取り入れたことで、企業にどのような好影響が表れたのかを紹介します。

小さなゴールを複数設定し、モチベーションを維持

前回に引き続き、アイデアソンを成功させるための運営ポイントを見ていく。

 

⑤小さなゴール設定と発想転換の促し

 

アイデアを実際に商品やサービスとして市場に投入するには、細かな時間管理と小さなゴール設定が重要となる。

 

このプロセスは、いわゆるリーンスタートアップ(仮説の構築、製品の実装、軌道修正を繰り返しながら、無駄を極力省き成功に近づく開発手法)やデザイン思考のプロセスに近く、プロトタイプを実際のユーザーに使ってもらい、何度も改善を繰り返しながら完成に近づけることになる。

 

アイデアソンでは、当初は参加者の集中力も高く意欲的だが、時間の経過とともに緊張感がなくなり、また取り組みそのものへのモチベーションも低下することが懸念される。

 

そこでプログラム設計においては、異なるチーム間での報告の機会や中間報告、ユーザーテスト、相互フィードバックなどの時間を設定したり、メンターからのアドバイスの時間を設けたりすることで、マイルストーンとなる小さなゴールを複数設定し、メリハリのある運営を行うことが有効といえる。

 

また、発表したり、他のチームの状況を知ることで、いい意味での競争意識を芽生えさせることもアイデアソンがより良い成果を生み出すためには効果的となる。

 

報告やユーザーテスト、メンターからのフィードバックを受ける機会があることで、発想の転換を促すことにもつながる。つまり、メンターや他の参加者、ユーザーからのフィードバックを受けて、コンセプトや仕様の変更を行う機会が生まれることで、より良いアイデアへと発展していくのである。

アイデアソンの質を高める「参加者間の信頼関係」

⑥参加者の多様性確保

 

参加者の多様性の確保は、アイデアソンを実り多いものにするためには欠かせない最大の条件とも言える。マーケッター、デザイナー、エンジニア、アナリスト、コンサルタントといった異なる専門性を有する人の参加はもちろん、何よりも重要なのは、課題意識を持つ人や社会起業家といった当事者意識を持つ人の参加の割合が、アイデアの実現に影響する。

 

アイデアソンで生まれたアイデアが実際に形になるには、何よりも“will”が重要となる。つまり、「この課題を解決したい」、「こんなサービスを創りたい」という強い意志が必要である。そのためには、アイデアソンで扱うテーマに対して当事者性を持った人をいかに巻き込むかが大切となる。

 

多様な参加者を確保するには、さまざまなコミュニティとの接点づくりを主催者サイドが日常的に行うことが求められる。また、SNS等を活用した呼びかけも必要だろう。加えて、アクセスしたいコミュニティを主宰する団体等とのコラボレーションも有効になる。

 

⑦参加者間の仲間意識の醸成

 

短い時間でより良いアイデアを生み出すためには、参加者間の信頼関係が重要になる。関係の質は、結果の質に影響する。つまり、お互いに対する信頼関係があることで、意見を尊重し合うことにつながり、気兼ねなく自分のアイデアを伝えることができる。そのことで新たな気づきが生まれていく。

 

しかしアイデアソンは、日常では関わり合いの少ない参加者が一緒にアイデア創出に取り組むことになる。多様性を確保したい反面、参加者同士がお互いを深く知らないことで、ぎこちない雰囲気が生まれたり、疑心暗鬼になったり、自分が考えるアイデアはレベルが低くて受け入れられないのではないか、といった不安を抱く場合も懸念される。

 

アイデアソンの質を高めるには、参加者同士がお互いのことを知り、一緒にアイデアを生み出す仲間としての意識をいかに初期段階で作り出せるかがカギとなる。そのためには、より深いレベルでの自己紹介ワークを行ったり、参加者間の距離が縮まるようなアイスブレイクを行うといった工夫が必要だろう。

 

また、会場全体の雰囲気づくりも重要で、お菓子や飲み物を用意し、カフェのような話しやすい環境を整えることや、ワークの途中に昼食をチームで一緒に取る時間を挟むなど、参加者間の関係形成、チームとしての一体感を生むための仕掛けにも配慮を行うことが大切となる。

高知大学地域協働学部 専任講師
博士(経営経済学)
社会福祉士 

専門は、社会的企業論/社会起業家論、コミュニティデザイン論。医療ソーシャルワーカー従事後、医療関連施設の立ち上げ、福祉施設の経営コンサルティングに参画。その後、中間支援機関においてコミュニティビジネス/ソーシャルビジネスのコンサルティング、コミュニティデザイン支援、農商工連携/6次産業化等の支援を担当。(独)中小企業基盤整備機構リサーチャー等を経て、現職。ビジネス・ブレークスルー大学非常勤講師、(独)中小企業基盤整備機構TIP*S人材支援アドバイザー等。アイデアソンファシリテーターのほか、ローカルイノベーション創出、起業家育成、地域づくり、コ・クリエーション創出に向けた実践とサポート、研究を全国各地で展開。

著者紹介

エイチタス株式会社 代表取締役

1974年生まれ。法政大学法学部政治学科卒。編集者・ライターを経てモバイル業界に転身。営業、ディレクター、取締役等を歴任したのち、2009年、地元行政、企業と「みやぎモバイルビジネス研究会」を立ち上げ。ITベンチャーでの経験を活かしながら、地域で自走する人や組織、社会を作るための活動を展開。2014年「GlobalLabSENDAI」代表幹事。2016年エイチタス株式会社を設立。企業、自治体などあらゆる組織、テーマでの価値の探索のサポートを展開している。

著者紹介

連載アイデアを実現する最強の方法「アイデアソン」の基礎知識

アイデアソン! アイデアを実現する最強の方法

アイデアソン! アイデアを実現する最強の方法

須藤 順 原 亮

徳間書店

「アイデアソン」とは、「アイデア」と「マラソン」を組み合わせた造語。大手企業や大学、地方自治体などで今話題のアイデア創出法で、facebookの「いいね!」機能を生んだと言われているハッカソンから、日本独自で進化をした…

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