前回に引き続き、アイデアソンが抱える「課題」とは何かを見ていきます。※本連載は、コミュニティデザイナーとして活躍する須藤順氏と、エイチタス株式会社の代表取締役である原亮氏の共著、『アイデアソン!アイデアを実現する最強の方法』(徳間書店)の中から一部を抜粋し、アイデアソンの概要と、アイデアソンを実際に取り入れたことで、企業にどのような好影響が表れたのかを紹介します。

事業化まで責任を持ってフォローできる組織は少ない

前回に引き続き、アイデアソンが抱える問題について検証する。

 

⑤実現へ向けたサポート体制の欠如

 

アイデアソンで生まれたアイデアを実際に実現させるまでには大きな溝がある。そのため、出されたアイデアやプロトタイプの具体化へ向けては、コンサルティングを含めたトータルなサポート体制が不可欠となる。

 

企業内で開催する場合は、そこで生まれたアイデアに対して、開発経費の提供やチームでの取り組みをプロジェクト化することで実現できる可能性は高まる。しかし、イベント型で開催した場合は、開発経費がないことに加え、だれが責任を持って開発を進めるのかといった問題が生まれる。

 

ハッカソンから生まれた代表的な商品・サービスとしては、ウェアラブルおもちゃ「Moff Band」があるが、これらの場合を見ても、ハッカソンで創出したアイデアがその後、さまざまな経緯をたどり、形を変えて商品化に至っている。つまり、実現に向けてはアイデアソン後が重要といえる。

 

現状、アイデアソンのファシリテーションや運営を担う組織や団体は生まれているものの、そこで生まれたアイデアを実際に立ち上げ、事業化まで責任を持ってフォローできる組織は少ない。そのため、どうしてもイベント的な要素が強くなりがちで、散発的な感が否めないという実態もある。

まだまだ足りない企画や運営をマネジメントできる人材

⑥不足するファシリテーターとチームの存在

 

最後に、場づくりとアイデア創出、コンサルティングをトータルにファシリテーションできる人材・チームの不足が挙げられる。

 

アイデアソン全体の企画や運営をコーディネートでき、場をマネジメントすることのできる人材は決して多いわけではない。特に、全体での合意形成を図ることが狙いでもないため、一般的なワークショップや対話型のファシリテーションスキルだけではなく、技術など多方面の領域に対する見識と、アイデア創出・収束手法を状況に合わせて使いこなせる高い能力が求められる。

 

また必要に応じ、ビジネスモデルに対してアドバイスをするようなコンサルティングの知識や他のコミュニティなどをつないでいくコネクティング能力など、求められる能力は多岐にわたる。

 

実際、現在実施されるアイデアソンにおいては特定の人材がファシリテーターを務めることが多く、暗黙知としてブラックボックス化している面もあるため、今後はアイデアソンのファシリテーターが有する能力の可視化や、スキルやノウハウのオープン化も必要になると考えられる。

 

オープンイノベーションやコ・クリエーションを生み出すことが期待されるアイデアソンはこれまでのワークショップとは異なり、具体的成果を生み出すための仕掛けがちりばめられている。特に大事なのは、アイデアソンは、ファシリテーターと運営スタッフ、事務局、そして参加者が一緒に作り上げる1つのアートだということである。

 

もちろん、アイデアソンを機能させるには多くの課題がある。しかし、その場で出会い、時間と空間をともにしながら一緒に価値創造へ向けて協働、共創していくことそれ自体がアイデアソンの最大の価値だと言えよう。

 

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