参加者に考えてほしい領域や方向性を明確にしておく
アイデアソンは多くの場合、単に実施することが目的ではなく、アイデアを成果という形にすることが求められる。そのためには、主催者側が押さえておかなくてはならないいくつかのポイントがある。それらを順に解説しよう。
①インプットにより情報をいかに正確に提供できるか
アイデアソンの成果は、インプットで提供する情報の質や濃度、設定されるルール(一定の限定制約)の有無により左右される。だれもまだ気づいていない問題を見つけ、「これが欲しかった」と思えるようなイノベーティブなアイデアを生み出す前提条件として、インプットフェーズの設計は重要となる。
インプットにおける情報提供は、参加者の問題意識や視点、モチベーションに留まらず、アイディエーションの幅や質へも影響を与える。インプットが曖昧であったり、フォーカスすべき領域やテーマが練りきれていない場合には、主催者側が期待する方向とは異なるアイデアへ関心が集まってしまうといったこともある。
ポイントは2つある。1つは、インプットによって参加者の意識の中に一定の制約を与えることだ。必要な情報をすべて提供するのではなく、アイデアソンの中で参加者に考えてほしい領域や方向性を提示し、アイデア創出の幅を一定程度狭めておくことが望ましい。
もう1つは、現場の追体験を意識した話題提供を行うことである。特に課題にフォーカスする必要がある場合は、インプットにおいて現場の課題をできるだけ深いレベルで共有できるような仕掛けが必要となる。
たとえば、一般論ではなく、個別具体的な問題に焦点を当てることや、専門家などではなく、実際に課題を抱えている当事者による悩みを報告してもらうといったことも方法の1つである。
ここが甘くなると、課題設定が不明確になり、その結果、課題解決につながるアイデアとはかけ離れたものになってしまう。
どういう成果へ結び付けたいのかによってインプットの中身、話題提供者の選定、活用するアイデア創出の手法なども変わってくることを念頭に、インプット部分の設計を行うことが重要となる。
イベントの開催目的、最終目標を設定・明確化
②ゴールの位置づけ
アイデアソンの設計においては、出口戦略の位置づけを明確にしておくことが望ましい。
イベントの開催が目的なのか、サービスを実際に市場投入することを目指すのが目的なのか、人材育成が目的なのか、目的によってどういった出口戦略、ゴールを描くかは変わる。
イベント開催が目的であれば、特段成果についてコミットしない場合もあれば、賞金を提供し、その後は参加者自身に委ねる場合もある。一方、市場投入までも視野に入れているのであれば、アイデアソン後のフォローアップが不可欠となるし、開発経費や開発環境の提供、コンサルティング等のサポートも必要となる。
いずれにしても、どういった出口を想定するのかによりアイデアソンの全体設計やプログラム、必要となる資源が異なる。より効果的なアイデアソンとするためには、まずは出口戦略の明確化が大切になる。
この話は次回に続く。