前回に引き続き、「アイデアソン」が注目を集める理由を見ていきます。今回は、「社会価値創造イノベーション」をテーマに取り上げます。※本連載は、コミュニティデザイナーとして活躍する須藤順氏と、エイチタス株式会社の代表取締役である原亮氏の共著、『アイデアソン!アイデアを実現する最強の方法』(徳間書店)の中から一部を抜粋し、アイデアソンの概要と、アイデアソンを実際に取り入れたことで、企業にどのような好影響が表れたのかを紹介します。

新たなルールを作るためには、問題の発見が重要

前回に引き続き、アイデアソンが企業や自治体で注目を集める理由を見ていきます。

 

③社会価値起点への発想転換

 

イノベーションを考える際、その起点はどこにあるのか。これまでのイノベーションの核にあったのは、何よりもまず、技術であった。しかし、技術やサービスのライフサイクルが短期化し、加えてコモディティ化が進展する中で、これまでのように技術起点によるイノベーションの優位性は相対的に低下している。

 

こうした中で注目されるのが、社会課題の解決を起点に置く「社会価値創造イノベーション」である(以下の図表参照)。

 

[図表]技術イノベーションと社会価値イノベーション

出所:ITと新社会デザインフォーラム(2013:p.74)より
出所:ITと新社会デザインフォーラム(2013:p.74)より

 

技術中心のイノベーションは、どちらかといえば企業のシーズ起点であった。一方、社会価値創造イノベーションは、ユーザーや顧客、社会がまだ気づいていない潜在的要望=ウォンツを掘り起こし、その解決へ向けたイノベーションを目指す。

 

そのためには、古い思い込みを捨て、新たなルールを自ら書き換える必要があり、まだだれも気づいていない欲求や要望、不満といった問題の発見と開発が重要になる。

 

では、社会や暮らしの中にある欲求や要望はだれが持っているのか。問題の近くにいるのは、我々一人ひとりでしかない。

 

つまり、社会価値創造イノベーションを起こすには、社会や生活上の課題や、まだ気づいていない本当の問題を見つける必要があり、そのためには多様な人が集まり、一緒に時間と空間を共有しながら濃密な相互作用を繰り返さなくてはならない。そして、一人ひとりの身近な問題や気づき、不満をあぶり出すところからスタートする必要がある。

 

アイデアソンは、社会価値創造イノベーションを生み出すきっかけとなる場としても注目が集まっている。

社会課題の解決には、多様な人々による協働が不可欠

IT領域から始まったアイデアソンを取り巻く動きは、その注目度を背景に、あらゆるシーンで活用が進み、急激に広がりつつある。

 

それは同時に「なぜアイデアソンなのか?」という問いに対する答えにもなってきている。アイデアソン普及の背景には、一組織や専門集団、1人の天才だけでは、複雑化する社会課題への対応が難しくなっているという事実がある。

 

こうした社会課題の解決には、多様な背景を持つ主体による協働が欠かせない。そして、これまでの常識を超えたアイデアを生み出し、小さな一歩を踏み出していくことが求められているのである。

 

アイデアとは、既存の知識の組み合わせだと言われる。ではその知識の主体はだれかと問われれば、我々一人ひとりだ。アイデアソンは、一人ひとりが知識を持ち寄り、共に価値創造を図る場なのである。

 

サラリーマンを「副業」にしよう

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俣野 成敏

プレジデント社

「老後2000万円問題」「働き方改革」「残業規制」…等々。政府も会社も「自助努力でなんとか生きよ」と突き放す中、コロナ・ショックによる「リストラ」が、さらに追い討ちをかけています。一方で、自己責任の名のもとに「副業…

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