「老後資金は十分」…油断すると家計崩壊も
そしてもう一つ、思いがけずストレスの種になったのが、夫婦間のズレだといいます。
「妻は今も働いていますが、『自分の稼ぎは自分のお小遣い』という考えは変わりません。うちの親の介護費用を一緒に出そうとか、そんなことも一切言ってきません。妻の両親はすでに亡くなっているので余計に関係ないと思うのかもしれませんが、夫婦ですから、もうちょっと自分事だと思ってくれたら、というのは贅沢でしょうか」
不満はあるものの、いまさら家計のルールを変えて、夫婦仲にヒビを入れるわけにもいかないと、何も言わずに飲み込んでいるといいます。
「現役時代は激務でしたから、老後は心身共にのんびりできると思っていたんです。気ままな旅行、夫婦での趣味、読書に散歩……。でも、現実には親の介護と費用がチラついてそれどころじゃありません。ですが、自分たちの老後も少しは楽しまないとね。最近になって、ようやくそう思えるような心の余裕が出てきました」
老後とは、想定外の支出と向き合い続ける時間でもあります。親の介護費用もその一つ。本来は親の介護費は親のお金で賄うのが原則ですが、現実にはそうはいかないケースも少なくありません。夫婦それぞれに親がいれば、最大で「4人分の介護費用」がのしかかる可能性も。
「自分たちの老後資金は十分ある」――そう思っていても、油断は禁物。夫婦以外が要因で、家計崩壊に向かうリスクもあります。親が元気なうちに介護について話し合っておくこと。金銭的にどこまで支援できるのかを、あらかじめ考えておくこと。それが、思い描いた老後を守るための最低限の備えになるのではないでしょうか。
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