どんな夫婦にも、多かれ少なかれ不満はあるものです。「生活があるから」「子どもがいるから」と、自分の気持ちにフタをして、なんとなくやり過ごしてきた――そんな人も少なくないでしょう。けれど、夫の退職という人生の大きな節目が、だましだましの暮らしに区切りをつけるきっかけになることがあります。事例と共に見ていきましょう。
美代子さん（65歳）は、26歳で2歳年上の夫と結婚し、2人の子どもを授かりました。夫は地元企業の会社員で、最高年収は600万円ほど。一方の美代子さんも電子部品工場のパートとして家族を支えてきました。
一見すると幸せな家族。しかし、美代子さんにはずっと抱えている不満がありました。それは、夫がお金に細かく口うるさいことです。
「贅沢するなよ」……それが夫の口癖でした。何かを買おうとすれば「本当にそれ、いるのか？」と眉をひそめる。子どもに食べさせようと果物を買えば、「果物なんて腹の足しにならないのに」とため息。たまに外食をすれば「この金額を出して、この程度のものか」――。
夫は怒鳴ったり暴力を振るったりすることはありません。それでも、美代子さんの不満は年月を重ねて積もりに積もっていました。
共働きで子どもを育て、今では2人とも大学を卒業して立派に独立しています。住宅ローンも完済し、老後資金も十分に準備していました。
そんな夫が定年退職を迎えたのは、2年ほど前のこと。完全に仕事を辞めてからは、ほぼ一日中家にいるようになりました。
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