実家と縁を切ることに
とりあえずうちの近所の焼肉屋で、彼女のナナコと待ち合わせて夕飯をとった。
細かい話は省いて、ざっくり「母親が死んで、『全部姉の名義にする』という手続きをした」と伝えると「ねえ、シンゴはそれでいいの?」と聞かれる。
「いいも何も、オヤジがそう言っているから。それで別にいいんじゃないの? 俺はよくわからないけれど」
「そっか……」
「よくわからないけれど、あとから書類を送るからそれにサインして、印鑑を押して送り返せだってさ。これで親の面倒を見なくていいなら、それはそれでいいわ。そもそも実家の財産なんて、アテにしていないし」
「そっか、それならいいんだけど……。ちょっと気になるな」
ナナコがぼそっとつぶやいた言葉が、こっちもちょっと気になってしまった。でもとりあえず、俺はもうあの実家とは関係がなくなった。向こうから頼まれるまで、こっちからは絶対に行くものか。
なぜか父からSOSコールが
そんな話を忘れかけていた頃、オヤジから「入院することになった」と電話がかかってきた。頭痛がするから車で病院の外来に行ったら、血圧がかなり高くて、そのまま入院することになったらしい。
姉は運転免許を持っていないので、駐車場に停めたままの車を実家に移動してほしい、ということだった。……頼まれるのが、思いのほか早いな。車の移動のために病院に行って、その足で実家へ向かった。
しかし、中へ入ると、リビングにゴミが散乱しているではないか!これは絶対に姉の仕業だ。母が死ぬ直前まで、部屋はきれいだったからな。
「アネキ! 何でちゃんとゴミを捨てていないんだよ、ちゃんと掃除しろよ」
「調子が悪かったのよ。私はホコリアレルギーなのよ! 掃除なんてできない」
「アレルギーだったら、なおさら掃除しないとダメじゃないか」
「うるさいわね! 私の家だからほっといてちょうだい。勝手に出入りしないでくれる?」
「は? そもそもアネキが免許を持っていないから、俺が病院まで車を取りに行く羽目になったんだよ」
「あんたは車関係の仕事でしょ! 客だよ! やればいいじゃない」
それとこれとは、話が別だろうが。母が亡くなって、誰も家事をする人がいなくなったからか……。
まだ三か月も経っていないのに、この実家をこれからどうしたらいいのだろう? 姉の名義だからと言って、任せておいたら大変なことになるよな……。
