老親の元でひきこもる子ども…その実態
――老親の元、40~50代の子どもがひきこもったり、実家を出ずに暮らしたりするケースは少なくありません。そうした状況のなかで、資産をめぐる争いはどのように起きるのでしょうか。
ひきこもりといっても一様ではなく、ずっと実家で暮らしているケースもあれば、一度は家を出たものの再び戻ってひきこもる「出戻り型」もあります。実は、より金銭トラブルを起こしやすいのは後者。社会に出た経験がある分、知識や情報も持っており、親の資産を独占しようと知恵が働くからです。
また、共通するのは、自ら稼げないことから「親がいなくなったら生活できなくなる」と考え、家やお金に強く執着することです。たとえば、10代からひきこもっている兄が親の資産を独り占めしようと、「これ、書いてよ」と相続の書類を親に書かせて、あとからその事実を知った弟が驚愕……。こんなケースも実際にあるのです。
相続では、一度捺印・署名してしまえば法的に覆せないことが大半。たとえ身内であっても、書類をよく読み、必要があれば専門家に相談する慎重さが必要です。普段同じ家に暮らし世話になっているからといって、子どもから「ちょっとここにサインして」と言われても、安易に応じてはいけません。
ただし、こうした「ひきこもる人とその親」の問題においては、ひきこもる側だけが一方的に悪いとも言い切れないのが、難しいところです。
親のほうも、当初は「早く自立しなさい」と言っていたのに、高齢になるにつれ子どもの存在を頼りにするようになりがちです。実家にいる子どもに、「お前には多めに遺産を残す」と親のほうから言うことも少なくありません。
まさに「共依存」の関係ですが、双方がその構造に気づいていない。こうしたケースは非常に多いんです。
たとえば、ホールケーキを子ども3人で分けるとき、親が見ていれば3等分しますが、親がいなければ“強い子が多く取る”ことになりがち。それと同じことが相続にも当てはまります。
「ずっと家にいて親の面倒を見てきたから、この家は私のもの」と一方的に主張すれば、他のきょうだいと争いが起きてしまうのも当然なのです。
