母亡き後、高齢の父が「婚活マッチングアプリ」で暴走
俺の名前はタカシ。45歳。千葉県の松戸市在住で、都内のメーカーに勤務している典型的なサラリーマンだ。
妻は二歳年下で、高2と中3の二人の娘がいる四人家族。共働きで仕事は忙しいけれど、いわゆる「普通の家庭」だったと思う。母親が突然、倒れるまでは……。
先日、下北沢の実家で70歳の母が亡くなった。心筋梗塞だった。母が自宅に一人でいる時に台所で倒れ、帰宅した父が発見したらしい。そのまま救急車で病院に搬送され、俺も慌てて妹のエミコと一緒に駆けつけた。
しかし死に目には間に合わなかった。葬儀は身内だけで済ませた。
「オヤジ、母さんがいないと何もできないんだよな。まさか母さんが先に逝くとは……」
父は74歳。大学を出てから定年まで、市役所で勤め上げた。いわゆる「団塊の世代」で、母とは大学のサークルで知り合ったという。母は銀行で3年ほど働いて結婚し、その後はずっと専業主婦だった。
身の回りの世話をしてくれていた母がいなくなると、オヤジは自分のパンツすら自宅のどこにあるのかもわからない。洗濯も自分ではできないから、汚れたパンツは捨ててしまって、コンビニで新しいパンツを買っていたらしい。
ご飯はコンビニ、パンツは洗わずに買う……、部屋はもちろん荒れ放題だ。実家でオヤジがそんな状態で一人暮らしをしていて、この先、大丈夫なのか?
とはいえ、俺も妻も自宅から電車で一時間以上かかる実家に、そうそう行ってもいられない。妹のエミコも結婚していて子どもがまだ小学生と幼稚園児だ。ただ自宅が二子玉川なので近いし、専業主婦なのだから「なんとかオヤジの面倒、見といてよ」と押し付けておいた。
妹はグダグダ文句を言っていたけど、忙しいのは俺のほうだからな。よし、これでひとまず安心だ。娘なんだから、親のパンツくらい洗っとけよ。
――葬儀から1か月後。妹から「お兄ちゃん! お父さんの様子がおかしいの」と連絡が届いた。
「オヤジも、とうとう認知症か!?」と思いきや、実際は真逆だった。
身だしなみを急に気にしはじめて、理髪店に行き、新しい服まで買っている。妙にウキウキしていて、家の中もきれいでピカピカだ。外出する機会も増えて、最近は頻繁に外泊までしているらしい。一体、何が起きたのだ?
妹から衝撃の事実が告げられた。

