妻の死から1か月で二回り年下の”彼女”ができた父
「お父さんね、二回りも年下の彼女ができたらしいよ! お兄ちゃんには絶対に言うなって口止めされていたのだけれど、婚活アプリで知り合ったんだって。けど、大丈夫かな? あんなに背が低くて、ハゲ散らかしたおじいちゃんに寄って来る女なんてさ、遺産目当ての人じゃない?」
74歳のオヤジに彼女? 婚活アプリ? 二回り年下って?まだ母さんの四十九日も済んでいないのに!どういうことだよ……。頭が混乱して理解ができない。
よくよく聞いてみると、きっかけになったのは俺が渡したスマホだった。
オヤジの携帯はガラケーで、母さんが死んでからというもの、仕事中に「おい、洗濯機の使い方がわからん」などとくだらない電話がしょっちゅうかかってくる。
「せめてメールにしてくれ」と言っても、打つのが面倒だからと四六時中、電話をかけてきて仕事にならない。辟易した俺は、休日にオヤジと一緒にスマホを買いに行き、スマホの使い方教室まで通わせたのだった。
その「俺が買って渡したスマホ」で婚活アプリの存在を知り、いつのまにか登録して、二回りも年下の女性とやり取りを重ね、交際に発展していたというのか。
……信じられない。「スマホなんか渡されても使えん、文字入力なんか、できない」と騒いでいたオヤジが!?参ったな。どうりで最近、メールも電話も来ないと思ったら、女がいたのか。俺は確信した。オヤジは変な女に騙されているに違いない。
オヤジには退職金が2,000万円まるまる残っているうえに、母さんが親戚に頼まれて義理で加入していた生命保険のお金も1,000万円ほど銀行口座に入っている。
実家だって駅から徒歩5分のとても便利な場所にある。前に不動産屋から「ご実家のあたりなら、土地と建物で3億円くらいになりますよ」と聞いたことがある。それに祖父が残した株式や債券なんかの遺産もあったはずだ。
オヤジのような背が低いハゲ散らかしたおじいちゃんが、モテるわけがない。その女はオヤジの金目当てに決まっている。俺がオヤジとしっかり話して、目を覚まさせてやらないと……。
