大学費用は1,000万円…「見返りを期待しそうになっていた」
息子は「それなりに給料はもらえるけど、仕事が合わなくて毎日息が詰まりそうだった。病んでしまいそうで……若い今のうちに世界を見てみたいとも思った」と語りました。
お金のことを聞くと、2年半の間、休日はほとんど寝るだけで終わってしまい、結果的に貯金ができていたとのこと。とはいえ十分な余裕があるとはいえないため、退職後は旅の資金や1年分の奨学金の返済分をアルバイトで集中的に貯めて、東南アジアやヨーロッパを中心に世界を巡る予定だと言いました。
それを聞いて、小林さんは見守ることしかないと腹をくくったといいます。
「親としては、ちゃんと働いて安定してくれることが一番安心できる。でも、それが彼の幸せとは限らないんですよね」
同時に、ふとよぎったのはこれまでかけてきた教育費のことです。
「東京の大学に4年間、入学金や授業料、生活費の仕送り、その他もろもろで1,000万円近くかかったと思います。たった2年半で辞めるなら、地元で進学・就職していた方がよかったんじゃないか? そう思わないかといえば嘘になります。息子が大企業勤めのままなら自分たちの老後も安泰だったのに……。そんなことをいつのまにか考えてしまっていた自分にも気づきました」
それでも、小林さんは気持ちを切り替えたといいます。
「これからどうなるか分かりませんが、ある程度自由にしたら、また再就職するでしょう。あの子が納得できる人生になるのが一番。心身共に健康でいてくれたらと思います」
教育は投資ではない…これからの時代、親ができること
子どもの教育には、相応の費用と時間がかかります。しかし、たとえ良い大学に入り、良い企業に就職しても、それが一生の安定を保証する時代ではなくなりました。親として、どこまで支援すべきか――。小林さんのように、子どもの選択に揺れながらも信じて見守る覚悟をもつ親もいるでしょう。
教育は投資ではありません。見返りを求めてはいけないものです。しかし、そう頭では分かっていても、期待や感情が入り交じるのが親心です。とはいえ、今後ますます多様化するキャリアや価値観のなかで、親ができることは「子どもが選ぶ道を信じてあげること」なのかもしれません。
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