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活況の裏で進んだ「倒産急増」の深刻な実態
帝国データバンクが発表した『中古車販売店の倒産動向調査』によると、2025年1月から5月までのわずか5ヵ月間で、中古車販売店の倒産件数は50件に達しました。これは前年の同じ時期(32件)と比較して1.5倍を超える大幅な増加であり、この期間に50件を超えるのは実に13年ぶり(2012年以来)という異常事態です。このペースで推移すれば、年間倒産件数が100件を超える可能性も現実味を帯びており、業界には激震が走っています。
倒産の内訳を見ると、その深刻さがより一層際立ちます。負債額別では、「5,000万円未満」が33件と全体の66.0%を占め、1億円未満の小規模な倒産が全体の8割に上っています。これは、地域に密着し、住民の足としての日々のカーライフを支えてきたような「街の車屋さん」が、次々と姿を消していることを意味します。都道府県別に見ても、東京都、埼玉県、愛知県が各5件と都市部で多発しているものの、北海道や神奈川県(各4件)など、全国的に苦境が広がっていることが分かります。
では、なぜこれほどまでに倒産が急増しているのでしょうか。最大の要因は、前述した「仕入れ価格の高止まり」です。コロナ禍のピークは過ぎ、新車の生産は回復しつつあります。しかし、一度高騰した中古車の仕入れ価格は、なかなか下がりません。部品価格の上昇や装備の充実で新車自体の価格が上がり続けていることや、依然として旺盛な海外への輸出需要が、中古車相場を高止まりさせているのです。
資金力の乏しい中小事業者は、高騰した人気車種の仕入れ競争に勝てません。結果として、品揃えは売れ筋から遠い車種ばかりになり、顧客の足が遠のくという悪循環に陥ります。仕入れ値が高いにもかかわらず、販売価格にすべてを転嫁することも困難です。なぜなら、長引く物価高で消費者の財布の紐は固くなっており、高すぎる中古車には手が出ないからです。まさに「利益なき繁忙」ともいえる状況で、売上は立たずに運転資金だけが消えていく――。
さらに追い打ちをかけているのが、一部の大手事業者による不正問題に端を発した「業界全体のイメージ悪化」です。保険金の不正請求や、顧客への代金未払・未納車といった問題が大きく報道されたことで、中古車業界全体に不信の目が向けられるようになりました。消費者が買い控えを起こすだけでなく、真面目に営業している販売店までもが疑いの目で見られるという、負の連鎖が生まれています。
帝国データバンクの景気動向調査でも、中古車販売店の景気DIは27ヵ月ぶりに40を下回るなど、事業者のマインドは冷え込みきっています。物価高、価格転嫁難、そして業界への不信感という三重苦が続く限り、中古車業界、特に中小事業者の淘汰は今後も高水準で推移していくと見られています。
[参考資料]
株式会社帝国データバンク『苦戦する中古車業界 倒産が過去最多に迫るペース 1月から5月までで50件、13年ぶりの水準 背景に中古車価格の高騰、利益率低下など』
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